「スマランの社会テロ(前)」(2019年02月25日)

スマラン市とその周辺一帯で、2018年12月中旬から自動車への放火が続いている。
19年2月11日までの被害状況は四輪車20台、二輪車10台で、ほとんどが夜明け前
3時〜5時の間に道路脇に置かれていたり、あるいは住居の表門の内側に収納されていた
ものが燃やされた。中には、ミニマーケットの表に駐車して運転手は自宅に帰っていたア
ンコッまでもが、被害に遭っている。

放火の手口は石油を入れたビンに布で栓をし、布に火をつけてから投げるという方法だか
ら、家の中のカーポートが外の道路から少しくらい離れていても、犯人には痛くも痒くも
ないところだろう。

事件のひとつは、監視カメラにその映像がしっかりと撮影されていた。オートバイでやっ
てきたフルフェースヘルメットの犯人はターゲット近くで止まり、下りて悠々と火炎瓶に
点火してから家のフェンスの向こう側にある車にそれを投げつけ、ふたたび悠々とオート
バイで立ち去ったシーンだ。

スマラン市内で17件、クンダルで9件、ウガランとグロボガンで各1件と合計28件の
事件が起こっていたが、16日にまたスマラン市内で、18日はトゥマングンでそれぞれ
一件発生し、件数は更に増加した。

最初はその動機を怨恨もしくは経済利益目的のものと推測していたスマラン警察本部も、
被害が車両火災だけであること、被害者が口をそろえて「思い当たるような敵は持ってい
ない」と述べたことなどから、捜査方針が五里霧中に陥っている。この事件は州警察本部
が乗り出したものの、犯人側が残した証拠品や目撃者、あるいは被害者側で推測される動
機などが一切欠けており、捜査をしあぐねている印象だ。

事件データを見ると、事件発生は高級住宅地区でまったく見られず、ミドルクラス以下の
住宅地区でばかり起こっている。犯人は警備員の見張りが厳しいエリアを故意に避けて、
夜間はみんなが寝静まってしまうエリアをターゲットにし、しかも袋小路の街区でなく、
地区への出入りが可能な道路が必ず複数ある場所で行っていることが明らかになっている。

スマラン市内では、この事件のおかげで、中流層住宅地区での住民夜間自主警備が再び活
発化し始めたとの話だ。ronda malamあるいはsiskamlingなどと呼ばれる住民の夜間自主
警備にはわたしも巻き込まれたことがあるが、ふだんからあまり付き合いのない隣人たち
との親交が深まる場にそれがなっていることも確かだろう。[ 続く ]