「スマランの社会テロ(後)」(2019年02月26日)

州警察は1千2百人の要員を投入して夜間検問と危険地区の保安警備を強化しており、ま
た総力出動のための日中時間帯待機要員を24時から5時までの時間帯にシフトさせてい
る。ところが警察がスマラン市内の警備を強化したら、犯人はそれをあざ笑うかのように
グロボガンで事件を起こした。

スマランのディポヌゴロ大学犯罪学者は犯人像について、四種類の人間がこのような事件
を起こすと解説した。
[1] 精神異常者。[2] 他人が苦しむ姿に愉悦を感じるひねくれたいたずら者。[3] 経済的
成功者のシンボルである自動車を持って優越感を抱いている人間(と自動車を持たない犯
人の目に映っている)に鉄槌を下すという社会批判精神。[4] 反社会的行為を成功させる
ことで精神的あるいは物質的利益を得ようとする人間。世間に不安を掻き立てたり、ある
いは政府や警察の面目を汚して社会的信頼を失わせることがその動機になっている。


2019年はインドネシアの政治年である。大統領選挙・国会総選挙・地方首長選挙・地
方議会議員選挙などが一斉に行われる年だ。デモクラシーの祭典とインドネシア人が呼ん
でいる国をあげての選挙が近付くと、そんな建前看板とは裏腹のどろどろした事件が数え
切れないほど起こる。

2006年にドゥマッで選挙が行われた際、2005年に「首絞め幽霊」トピックが地元
ばかりか、全国的な話題になった。ある期間内に首を絞められた跡のある死体が四つ、別
々に見つかったことが、そのトピックを生んだ。地元民はその噂におびえ、夜間はみんな
家の外に集まって一緒に睡眠を取るようなことも、あちこちで行われた。首絞め幽霊の話
は『インドネシアの「妖怪変化と超常譚」』
http://indojoho.ciao.jp/koreg/liblenik.html
でどうぞ。

社会不穏や社会騒擾は現政権側の再選に挑戦する者の隠れ兵器となる。かつて世間を騒が
せたコロルヒジャウやプラスチック米などもその類だ、とスマラン国立大学社会学者は語
っている。

噂話で人心が動揺する時代から放火テロのような実力行動による社会不安へと手口が変わ
ってきているとするなら、それをわたしがインドネシア社会の知的レベルの向上を示す羅
針盤と言えないだろうか、などとコメントしたらば、わたしは無責任野郎と罵られるだろ
うか?[ 完 ]