「エゴ社会の持つ公共性(前)」(2019年02月27日)

歩道や車道の一部で商売しようとするカキリマ商人はいまだに絶えない。社会底辺での品
物販売ビジネスが競争原理の真っただ中にあることは否定しようがないし、そこに動く金
を狙ってゴロツキがからんでくるのは、どこの国どの民族でも違いがない。

カキリマ商人が法規と公共秩序を破って商業利益を求める活動に邁進しようとするのを、
奨め・励まし・できる部分は保護を与え・上がった利益の一部をむしり取って行く輩がい
る。

それを真似て公共秩序を統制すべき職に就いている者までが似たようなことを行っていた
時代は一応通り過ぎたはずなのだが、二足のワラジを履き、片身の刀身をくるくる回して
誰を斬っているのかわからない輩が生き残っている印象も、拭いきれないものがある。か
れらの黒装束が隠れ蓑としての巧みさを過去の時代より一層効果的なものに変化させてい
ることだけは疑いがあるまい。

中央ジャカルタ市タナアバン市場は、毎日大勢の消費者が集まって来る場所であるがため
に、市場周辺道路はカキリマ商人で埋め尽くされる。路上には商人の陳列品と歩行者があ
ふれ、場所によってはアンコッが数珠つなぎになっていて、かつてはその地区へ車で乗り
入れるたびに自分を呪ったものだ。

歴代都知事はその状況に整然たる秩序を回復させようと努力したものの、公権力による強
制と監視が持続する例は稀であり、冒頭に述べた原理が必ず忘れたころに舞い戻って来て、
元の木阿弥に復旧するのが常だった。でなければ歴代都知事がその問題に挑むことにはな
らないわけだ。

2019年1月のある日、タナアバン市場ブロックGの向かいにあるクボンジャティ通り
の歩道に移動式ハンガーを置いて部屋着を販売している若い男性は、この場所は月50万
ルピアの地代を払っているんだと言う。この場所というのは、長さ1.5、幅0.5、高
さ1.5メートルの移動式ハンガーをひとつ置けるだけの広さしかなく、かれの左右には
別のカキリマ商人が同じように自分の商売をしている。「地代だけじゃなくて、毎日1万
ルピアの金を集めに世話人が回って来る。」
[ 続く ]