「ブアナガが今廉い」(2019年03月01日)

ドラゴンフルーツをインドネシア語に直訳したブアナガ(buah naga)が供給過剰で値崩れ
を起こしている。11月から3月がブアナガの収穫期であり、全国的な供給過剰だから、
生産農民の中には供給量を減らそうとして収穫の一部を川に大量投棄した者が出たという
話も伝わっている。しかしそこまでやるひとは稀で、たいていの農民は相場が回復するの
を待ちながら、収穫を延ばし延ばしにしているのが一般のようだ。ブアナガは日持ちがす
るから、便利であるにはちがいあるまい。

東ジャワ州バニュワギ県もブアナガの産地であり、値崩れはここをも襲っている。19年
1月はキロ5千ルピアだったのが、2月に入ってからキロ2千ルピアに暴落した。農民に
とって、史上最低の相場だそうだ。最高値は2013年のキロ6万5千ルピアで、わずか
5〜6年でここまで動くかという変動の激しさには驚かされる。

バニュワギ県ソボ郡の生産農民のひとりは、1Haの農園で40日ごとに5トンの収穫が
ある、と語る。キロ5千ルピアなら2千5百万ルピアの収入になり、純益は1千万ルピア
になる。それがキロ2千ルピアなら、売れば売るほど大赤字だ。

しかしスンプ郡ジャンベワギ村では村をあげて収穫が行われているが、相場の暴落に関す
る愚痴を言うひとはいない。農民のひとりは言う。「1千ルピアになったって、うちは赤
字にならないよ。有機栽培してるから。」
オーガニックだって、キロ9千ルピアから3千5百ルピアに暴落しているのだ。だがそれ
でも利益は出るのだ、とかれらは言う。

この農業グループは2015年にブアナガ栽培を始めた。ところがかれらには肥料を買う
金がない。代わりにヤギの排泄物を集めてきて、肥料にした。だが肥料の代わりにフンを
ばら撒くだけでは、十分な成果が得られない。県農業局の有機肥料に関する指導を得たか
れらは、合成肥料ゼロのブアナガ栽培を開始した。翌年は、一本の木に50個以上の実が
ついた。20キロ相当になる。

1Haに1千2百本が植えられているから、収穫は24トンだ。キロ3千5百ルピアなら8
千4百万ルピアの収入になる。生産コストはおよそ3割だから、利益の大きさが想像でき
るだろう。

肥料の問題ひとつにしても、これだけの差が出る。合成肥料を買って来て、溶かしてただ
撒くような仕事の仕方は有機農業ではうまく行かない。自然の中にある素材をひとつひと
つ最適な状態にしてやって、懇切丁寧に仕事していくことで自然は最大限のお返しをして
くれる。有機農業グループリーダーはかれらの哲学をそう語った。