「ジャワの田舎にGlenmoreがある(終)」(2019年03月06日)

オランダ時代から全国で行われてきた農園事業は、インドネシアが完全独立した後、全国
にあったオランダ資産と同様にインドネシア政府が接収した。そのオランダ資産接収につ
いては、インドネシア政府は後に賠償金をオランダ政府に支払っており、無理やりただで
奪ったということでは決してない。

農園事業は各地でいろいろな試行錯誤が重ねられた後、最終的に各地区の農園を運営管理
する国有事業体が作られ、それぞれが通し番号で呼ばれる会社名になっている。


PT Perkebunan Nusantara XII (第十二ヌサンタラ農園会社、PTPN XIIと略される)は
グレンモア地区の農園を運営管理する国有会社だ。この会社が世界に決して多くない高品
質カカオ、エーデルカカオ(Edel-fine cacao)を輸出している。

カカオにはこの高品質カカオとバルク(bulk)と呼ばれる一般品質カカオがあり、グレンモ
アでは農園5千Haのうち1千2百Haがエーデルの栽培に使われている。2018年に
はここでエーデルが450トン生産され、そのうちの85%が第一級クオリティで占めら
れた。エーデルの輸出価格はキロ当たり7〜8米ドルで、バルクの2.5〜3米ドルと大
幅な違いがある。

インドネシア産エーデルカカオはグレンモア農園で生産されるだけであり、オランダ時代
にこの地で開発されたのだそうだ。道理で植民地行政がグレンモアに特別待遇を与えてい
たわけが推察できる。

インドネシアのカカオ栽培は、バリ州タバナン県、アチェ州ピディジャヤ県、そしてバニ
ュワギ県グレンモア郡が三大生産地であり、それぞれにカカオの風味が異なっている。
グレンモア産は果実の酸味が混じったもので、後味に蜜の甘さが残る。タバナン産はグレ
ンモアの干しブドウのような風味でなくベリーの風味であり、ピディ産は豆類の風味だそ
うだ。


グレンモア農園のカカオはこの先5年以内に繁殖最盛期に入ると農園運営者は述べている。
今は樹齢8〜9年で、Ha当たりの収穫量はエーデルが400キロ、バルクは650キロ
だが、最盛期になるとエーデルは800キロ、バルクは1,600キロに跳ね上がる。

PTPN XIIはこれまで最高品質カカオをすべて輸出に回してきた。輸出先はドイツ、日本、
米国などだ。だがインドネシアでこれまで一般的だった原料輸出〜製品輸入というパター
ンから脱却しようとのアイデアが会社経営陣を動かした。最高品質の素材を使って製品を
作り、それを国民消費者に食べてもらおうというのである。

カカオ原料加工工場はロス・テイラー時代から今まで生き残っているものもあり、それは
見学や観光のためにも使われているが、もっと新しく建てられたものもある。その中に製
品加工工場が混じっていて、そこではチョコレートバーやプラリネ、飲用ココア粉末など
の生産が行われている。一日の生産能力は50キロだそうだ。

これから生産量が増加していくエーデルを使った国産の最高級チョコが今後マーケットの
店頭に増えて行くにちがいない。甘党にうれしい時代の幕開けだ。[ 完 ]