「カイマナのジンベイザメ(前)」(2019年03月11日) 西パプア州カイマナ(Kaimana)の海はジンベイザメのたまり場だ。地上最大の魚類である ジンベイザメの緩慢だが力強い屈伸運動と、人間には目もくれないような穏やかさは、見 る者の興味をそそってやまない。 昔は、ジンベイザメを毎日目にすることのできる場所がチュンドラワシ湾のナビレ県クワ ティソレ(Kwatisore)など数カ所しか知られていなかったが、今ではゴロンタロ州ボトゥ バラニ(Botubarani)、スンバワ島、東カリマンタン州ベラウのドゥラワン(Derawan)島と サヤン(Sayan)湾、そしてこのカイマナなど全国のあちらこちらに増加している。 それらの場所は元々ジンベイザメの通過場所と認識されていた。ジャワ島北部海域も同様 で、ジャカルタ湾北部にあるスリブ群島でダイバーが巨大なジンベイザメに遭遇した話は しばしば耳にするようになっている。地元漁民の間でも、出漁したときジンベイザメに遭 遇したら、危険を避けるために漁をやめてすぐ引き返さなければならないと言われている。 2013年以来、政府が保護動物に認定しているこのジンベイザメは、体長18メートル、 体幅1.5メートルに達し、シャークダイビングのシンボルとされている。 カイマナ県ビチャリ(Bicari)湾では、ジンベイザメに関する調査が進められている。海上 にはシラス獲りの小屋が設けられており、その数は40を超える。小屋の持ち主はたいて いがスラウェシからの出稼ぎ者であり、海上に住んでいるかれらはシラスの匂いに惹かれ てやってくるジンベイザメとほとんど毎日顔を突き合わせている。するとシラス獲りたち は自分たちの漁獲の一部をやって来たジンベイザメに分け与えるのである。 毎日やって来るという漁民たちの話に興味を覚えたコンサベーション・インターナショナ ル(CI)が数年前からカイマナでジンベイザメの観察を始めた。28の個体が識別され、 そのうちの7頭に追跡用発信機が装着された。28頭というのは、チュンドラワシ湾での 120頭、スンバワでの51頭に比べると、たいした数ではない。 カイマナにいる特徴的な一頭にはスシという名が与えられた。国民に敬愛される海洋漁業 大臣に因んでの命名だったそうだ。スシは体長6.5メートルで、28頭の中では二番目 に大きい。一番大きいのは体長7.5メートルなのだが、ひれに大けがをしているためそ の尊称をもらいそこねてしまった。[ 続く ]