「国語安全保障(前)」(2019年03月19日)

ライター: スナンカリジャガ国立イスラム大学教官、イブヌ・ブルダ
ソース: 2015年12月5日付けコンパス紙 "Keamana Bahasa"

昔、安全保障の話というのは必ず軍事に関わっていた。その後、安全保障という概念は食
糧・水・環境・等々へと発展拡大した。チュニス大学のアブドウッサラム・マスディイ言
語学教授は国語をその対象概念のひとつに付け加えた。その著作Huwiyyah al-Arabiyyah 
wal Amni al-Lughawiy(アラブアイデンティティと言語安全保障)の中でかれは、各国の
民族語がいま直面している問題は自らの国語を維持する重要性に関する政策決定者の、つ
まりは社会一般の意識という政治問題なのである、と論じた。

アブドウッサラム教授はもちろんアラブ語のコンテキストの中でそれを観ている。アラブ
諸国22カ国が国家アイデンティティにしているフーシャアラブ語は現在、危機に陥って
いる、と教授は言う。本来主流を占めるべき、学術・教育・国家行政・国民管理・経済・
ビジネス・メディア・その他公共スペースなどほとんどあらゆるセクターで、フーシャア
ラブ語は傍流の地位に滑り落ちつつあるのだ。その最大要因は各国が持っている方言なの
である。

インドネシア語も似たような状況にあり、英語その他の国際有力語の浸透を防ぐのは困難
だ。インドネシア語の重要なセクターはほとんどすべて、その現実に直面している。伝統
と学術進歩の中で英語やフランス語に、また特定分野においてオランダ語やアラブ語に、
インドネシア語は拮抗する力を持っていない。学術面でのキーコンセプトは伝統的に外国
語を輸入するありさまになっている。インドネシア民族はほとんどの場合、追従者であり
輸入者なのだから、それも無理はない。おまけにあるレベルでは、外国のコンセプトを拾
い集めているのが実態なのだ。われわれの学者たちはしばしば浅慮なまま外国語を流通さ
せようとし、それが結果的にインドネシア語が学術言語に育つことを妨げているというの
に。

経済やビジネス分野で英語の影響は避けるのがむつかしい。法律でインドネシア語を使う
ように定められているとはいえ、インドネシア民族と外国側との経済協力ではまず間違い
なく英語が使われる一方、特定分野ではアラブ語が使われる。それどころか実業家たちは、
同国人同士の間のビジネスにおいてすら、英語を使うことに誇りを感じている。[ 続く ]