「嗚呼、インドネシア語(終)」(2019年04月01日)

教育文化省国語開発育成庁長官は公共スペースにおけるインドネシア語の使用を主流にし
て行くことに加えて、地方語をよりしっかりしたものに育成すると同時に地方語からイン
ドネシア語への吸い上げをもますます強化する方針であることを表明している。「公共ス
ペースにおける使用言語は第一義的にインドネシア語にしなければならず、その地位を外
国語に譲ってはならない。外国語を禁止するということでなく、外国語は補完的に使用さ
れるべきなのだ。その優先順位を誤ってはならない。」

国民が日常生活を送っている公共スペースは、地方自治体がコントロールしている。そこ
にもっとも近い場所にいるのが地方自治体なのだから。

国語と地方語の維持発展における地方首長の規準に関する2007年内務大臣規則第40
号は地方自治体が何をしなければならないのかについての指令なのだが、インドネシア語
の使用を優先する条例・規則を作った州は全国34州のうちの14州しかない。オフィス
やショッピングセンターなどの公共スペースにおける秩序正しいインドネシア語の使用を
地元民に対して指導して行く役割を担おうとしている州はまだ四割しかない。


国語開発育成庁は全国各州に置かれた下部機関との間で、地方語の整備と共に国語に吸い
上げるための語彙・語法の検討を定期的に行っている。それは外国語の借用語化をミニマ
イズするための対策でもある。自国語が豊かになれば、外来語を自国語の語彙に加える必
要はあるまい。

毎年、2万5千の地方語が検討のまな板に載せられている。そして国語レベルに引き上げ
る結論に至れば、一年に二回その結果が公表され、インドネシア語大辞典(KBBI)の
収録語彙が増加するのである。
1988年に作られたKBBI第一版の収録語彙数は62,100だった。
1991年の第二版は72,000語。
2005年の第三版は78,000語。
2008年の第四版は90,000語。
2016年の第五版は127,036語。

政府が出しているKBBIに掲載されている単語は、政府が国語としてオーソライズした
言葉と解釈されている。いくらインドネシア人が日常会話の中でインドネシア語(非地方
語)として使っていても、KBBIの中にその語彙が収録されていない限り、それは非ス
タンダードの単語であると理解される。現実にインドネシアの知識人は一様にそのスタン
スを採っている。

その証拠に、バハサガウルがKBBIの中に一切登場しないのは、政府の姿勢の表明であ
ると見なされている。政治が扱っている正式国語に背を向けようとする国民の独自文化形
成意欲がクミングリス現象やバハサガウルを生み出しているという事実は、インドネシア
語の前途がいかに多難であるかということを物語っているようにわたしには思えるのであ
る。[ 完 ]