「BABS(5)」(2019年04月15日) WHOの報告では、全世界で45億人が妥当なトイレのない暮らしをしており、そのうち の8.9億人がBABS族だそうだ。人間が排出する汚水の80%は適切な処置のなされ ないまま、エコシステムの中に垂れ流されている。 ジャカルタ近辺ですら、いまだに古代そのままのBABが行われている。バンテン州タン グラン県の農村地区に入れば、住民の多くが村の中にある畑や、少し離れた川へ用足しに 行く。村には共同便所が設けられ、排泄物はセプティックタンクに溜められて、折々バキ ュームカーが吸い上げて処理場へ運んでいくシステムは作られているものの、家から離れ た共同便所まで行かねばならない者は、便所が混んだり、便所まで行くのが間に合わない ときはBABSを行うことになるのが普通だ。 似たような状況は、ジャカルタ・ボゴール・デポッ・ブカシのジャボデタベッ全域でも同 じように起こっている。住宅の建て込んだ住宅街には家の周囲に畑などなく、また汚泥ま みれの川に入って裸身をさらすような大人もいない。 とはいえ、東ジャカルタ市パサルボのカリバル川を背にして並ぶ住宅の裏手には、家の中 から川面に突き出されたさまざまな直径のプラスチックパイプが列をなしている。家の中 で出るあらゆる種類の家庭ゴミがそこから川の中に落とされる。川のゴミさらいをすると き、人糞が水流に乗って流れて行く情景は普通のことだと市清掃局職員は物語る。 いくら家の中に便器を置き、排泄行為が家の中で行われているとはいえ、排泄物処理の標 準プロセスに則さないあり方はBABSと同類だと言えるにちがいない。2018年のパ サルボ郡役場の調べでは、カリバルの川沿いで生活している人口41,134人中のBA BS常習者は2,599人いた。 北ジャカルタ市では、市内31町のうちBABS人口ゼロがやっとひとつだけあった。ク ラパガディン郡東クラパガディン町がそれだ。 首都圏における下水処理システムの普及遅れは首都圏の県市別に次のようになっている。 これはシステムを持たない戸数の総戸数に対する比で表されている。 ボゴール県 33.4% ボゴール市 25.0% タングラン県 12.5% スリブ群島県 11.5% ブカシ市 9.9% ブカシ県 8.2% ジャカルタ首都特別区 4.6% タングラン市 2.8% デポッ市 2.7% 南タングラン市 2.2% 下水システムがもっとも充実しているのは中央ジャカルタ市で、システムを持たない戸数 は0.9%しかなかった。[ 続く ]