「BABS(終)」(2019年04月18日)

2015年インドネシアのBABS族人口は12.4%を占め、2005年の25.2%
からは半減している。とはいえ、2億6千5百万の総人口中で10%としても2千6百万
人が該当するわけだ。妥当なトイレを与え、トイレに続く適切な処理プロセスを普及させ
るだけでも大仕事であるにちがいない。

ところで、それらのひり出してからそのアウトプットをどうするかというイシューのほか
に、ひり出した身体部位の周囲をどうするかという問題もある。野蛮人は何もしないで排
泄物をつけたまま日常活動に戻るのだろうが、いかんせん、それでは臭い。

紙・砂・石・木の棒や葉・水・・・・。昔の日本では中国文化から取り入れた「糞掻きべ
ら」というようなものも使われていたらしい。あるいは自分の尻を何かにあてがってこす
る。ここでもやはり、もっともきれいにできるのは水だったようだ。だからまず、何かを
使って掻き取り、最後に水洗いをするというのが文明度では最高のあり方と言えるにちが
いない。それを紙だけで済ませようとする文化は文明度から見ると劣っているということ
になる。そんな文化のひとは、左手を使って掻き取るから野蛮だと別の文化を評している
ようだが、最後に水を使っている点で使わない文化よりは文明的だと言えるにちがいない。


インドネシア人にとってのトイレは川だと言われてきた。ただし川はトイレだけでなく洗
濯場であり水浴場であり、そして生活用水の源としても使われる。インドネシア人は朝夕
川へマンディしに行き、排泄し、歯を磨き、食事用具を洗い、料理前の食材を洗う。マン
ディの時間になると大勢の村人が川へ繰り出し、一斉に水浴し、そして水中で排泄した。
インドネシア人にとっての大便排泄行為は他の大半の社会行動と同様に集合的な集団行動
だったと言えそうだ。

川がトイレなのだから家屋内にトイレのない構造が一般的になり、その家屋建築様式が文
化になると、川から何十キロも離れていて川へ排泄に行かない家庭も家にトイレがないの
が普通になって、結果的に川へ行かないひとびとにとっては野グソがライフスタイルにな
ってしまうというロジックのサイクルが起こる。

バリに住んでみてわかったことのひとつに、近くに川のない地域に住んでいるひとびとは、
上の統計数値通り、大空の下で大便の排泄を行なっているということがある。ましてや小
便においておやだ。そして、その行動には男女差がない。更に排泄後の身体部位をどのよ
うに清掃しているのかよくわからないのだが、それを付着させたままでズボンをはいてい
るようにしか思えない数人の男性にわたしは隣り合わせている。銀行や電話料金支払いの
場にたまたま居合わせたに過ぎないのだが・・・・・。[ 完 ]