「大統領選と国民の選択」(2019年04月22日)

2019年4月17日の国民総選挙投票が終わった。関心の焦点トップは次期大統領の選
出だろう。ジョコ・ウィドドとプラボウォ・スビヤントの宿命の対決は5年前と似たよう
な構図で繰り返され、そして再び似たような結末を迎えたようだ。

前回の得票率は、総選挙コミッションが2014年7月22日に発表した最終結果によれ
ば、ジョコ・ウィドド53.15%、プラボウォ・スビヤント46.85%で、842万
票の差がついた。

州別の結果では、次の諸州でプラボウォ・スビヤントの方が優勢だった。
アチェ、西スマトラ、リアウ、南スマトラ、西ジャワ、バンテン、西ヌサトゥンガラ、南
カリマンタン、ゴロンタロ、北マルク。まるで宗教色が滲み出ているような内容に見えな
くもない。


今回の最終結果と当選者の確定は2019年5月22日までに総選挙コミッションが発表
する日程になっているものの、諸サーベイ機関がクイックカウントの結果を早くも報告し
ている。それによれば、4月18日夜の時点でいくつかのサーベイ機関は、99%超のデ
ータをカバーした結果として、ジョコ・ウィドド+マアルフ・アミン組が54〜55%を
得ているという内容を公表した。必然的にプラボウォ・スビヤント+サンディアガ・ウノ
組は45〜46%となり、10%の差がついたことになる。

州別については、データカバー率が千差万別になっているということを前提にしてプラボ
ウォ組が優勢な州を列挙すると次のようになっている。
アチェ、北スマトラ、西スマトラ、リアウ、ジャンビ、南スマトラ、リアウ島嶼、西ジャ
ワ、バンテン、西ヌサトゥンガラ、西カリマンタン、南カリマンタン、南スラウェシ、東
南スラウェシ、北マルク。

プラボウォ・スビヤントを国家経営における純粋イスラム化への傾倒の象徴と見るなら、
ムスリム民族主義というパンチャシラに基づく国家理念を唱道するジョコウィという両者
の対決に国民が与えた選択が上の結果であるようにも思われる。宗教者であるよりも前に
民族の子であるという観念は、若い世代の増加と共に強まっているにちがいない。とはい
え、総選挙コミッションによる投票結果の確定まで、まだまだ即断は禁物だろう。


インドネシアは依然として、国民にとっての諸政策云々より前に、何を国家理念として奉
じるのかという次元の政論が選挙の焦点となっている国のひとつであることを忘れてはな
るまい。その賛否は国家を分裂させる可能性を秘めており、われわれは過去の世界史の中
でその実例をいくつも目にしているのである。

今回の大統領選でも、一方の肩を持った国民がソスメドの中でヘイトスピーチやホウクス
を互いにぶつけあっている。選挙運動期間中にテンションは上昇し、感情的なしこりが関
係者の間に高まったことは疑いがない。

単一民族を前提にして行われている選挙である以上、主義主張による諍いは選挙が終わる
とともに水に流し、民族の一体性を維持して、また明日からみんなが肩を組んで民族と国
家の建設に邁進しなければならない。「民族の一体性を護れ!」というスローガンが国政
中枢部や国民諸団体指導層からの呼び声として国民社会に流されている事実は、裏返せば
国が何を怖れているのかを如実に示している鏡であるにちがいあるまい。つまりそれは、
現在この国が置かれている状況の中で国家理念を揺さぶろうとする動きがこれからも続く
であろうことをひとつの懸念として持っておかなければならない、ということを意味して
いるようにわたしには思われる。

同時に行われた国会議員選挙の結果をコンパス紙は、PDI−P、グリンドラ、ゴルカル、
PKBの四党が当確で、他にデモクラッ、PKS、PAN、ナスデム、PPPの5政党が
加わり、次期国会は9政党で動くことになりそうだとの予想を報じている。