「保護動物密売シンジケートは健在」(2019年04月26日) 北スマトラ州メダンのブラワン税関監督サービス事務所所属の定期パトロール艇が19年 4月13日夜、マルク州ブル島から丸太材を積んだバージ船を曳航してブラワン港にやっ てきたタグボートを臨検した。 積荷に関する書類を調べ、積荷との整合性をチェックしたが、なんら問題はなかった。し かし検査官はタグボートの船内が異様な不安に包まれている雰囲気を嗅ぎ取っていた。船 員たちの挙動がインドネシア人の普通に持っている雰囲気と違っている。何かおかしい。 不審を抱いた検査官チームはタグボート船内の捜索を行うが、非合法な物は見つからない。 ところがふと、鳥の声が耳に入った。海鳥の声ではない。陸地の野鳥のさえずりだ。こう して船員室の壁の隙間に隠されていた保護鳥が発見されたのである。 発見された保護鳥はヌリアンボン(Alisterus amboinensis)23羽、黒頭ヌリ(Lorius lory) 1羽、黄冠カカトゥア(Cacatua sulphurea)4羽。ヌリアンボンは鉄の籠に詰め込まれ、黒 頭ヌリと黄冠カカトゥアは止まり木に脚を鎖で縛りつけられていた。 ブル島からメダンまでのおよそひと月間の航海で、鳥たちは食べ物として人間用ベビーフ ードだけを与えられていたため、衰弱の激しい状態になっていた。 この手口は今回官憲側がはじめて発見したもので、保護鳥密売シンジケートは既に何回か それを実行して成功しているのではないかと自然保護行政側は推測している。9名の船員 は全員が逮捕され、取り調べを受けている。この手口はシンジケートが綿密に計画したも のと思われ、船員たちが出来心で行っているものでないのは明らかだ。 タグ&バージで送られてくる貨物に対して物品検査も検疫検査もあまり厳しくなされない 実態が犯罪者に巧妙に利用されていることを、今回の事件は明らかにした。全国での検査 態勢がすぐに見直されるにちがいない。 先にコモドドラゴン幼獣の密輸摘発の際でも明らかになったように、インドネシア国内で 保護動物とされているものを闇捕獲し、それをひそかにマレーシアやシンガポールに送り 出して、国際的なブラックマーケットで売買する形が出来上がっており、インドネシア政 府は国内で保護動物を捕獲し国外に送り出すシンジケートの全貌を暴くことに躍起になっ ている。 回収された保護鳥はデリスルダンのシボラギ動物救援センターで体調を回復させてから、 ブル島に戻して自然の中に放されることになっている。