「アマチュアテロリストたち(2)」(2019年05月23日)

その最新例はシボルガでアブ・ハムザ33歳が構築したネットワークだ。ランプンでリン
ト・スギアント別名プトラが逮捕されるまで、治安当局はアブ・ハムザの姿を見落として
いた。ところがそれまでアブ・ハムザは定期的に爆弾原材料をネットショッピングプラッ
トフォームを通して購入しており、2016年初期以来、妻のマルニタ・サリ・ボル・フ
タウルッ別名ソリマと一緒にダエシュのオンラインプロパガンダを集中的に学習していた
のである。

通常、オンラインで社会ネットワークが形成されると、かれらはオフラインでその検証を
行う。たいていは、了承し合った場所で顔合わせの会合を開くのである。そのオフライン
検証が行われたあと、オンラインによる同志リクルートはスムーズに運んでいく。このよ
うにしてオンラインとオフラインの機能が効果的に組織形成に使われている。

バタムでのギギ・ラッマッ・デワやシリアでのバッルン・ナイムによるテロネットワーク
形成にわれわれはその手法を明白に見出すことができる。ギギの話によれば、かれはソロ
の国立高校で信仰活動に加わったときにバッルン・ナイムを知った。「そのときかれと自
分の間に特別な会話は起こらなかった。かれはそのとき、話題提示者のひとりだっただけ
だ。」筆者のギギへのインタビューでかれはそう語った。

オフラインでの普通の関係が、インドネシア国内のダエシュネットワークとのつながりを
ギギに持たせることになった。バタムでギギは良き夫、良き父親になろうとした。そのた
めにかれは宗教を深めようとしたものの、バタムで操業している日系会社での多忙な業務
と週末の家族サービスがかれをオンラインによる宗教学習に導いた。

バタムのモスクで日常活発に会話されているイスラムの理解に、かれは交わることがなか
ったのだ。オンラインによる宗教学習がかれにとってはもっとも簡便な手段だったのであ
る。皮肉なことに、オンラインの世界ではラディカルグループの方がイスラムに関する情
報提供に関して、はるかにクリエーティブなのが実情だ。

オンラインで宗教を深めて良き父親になろうとしていたギギは徐々に、アルゴリズムシス
テムに方向付けられて、ブーメラン現象に突き進むことになる。フェイスブックでのメッ
セージに「このギギ君はあの緑髪のひとかい?」とバッルン・ナイムは書いた。かれがか
つて髪を緑に染めていたことをフェイスブックの見知らぬアバターの主は一体どこから知
ったのだろうか?ギギは不思議でならなかった。高校時代に信仰活動に加わる前、かれは
無神的になって髪を緑に染めていた時期があったのは事実だ。軽い内容だがギギのソロ時
代の追憶に働きかける力を持ったその会話が、ギギをダエシュ信奉者集団のひとりにした
上、バッルン・ナイムがかれを組織の一員にリクルートするところへ導いて行ったのであ
る。

バタムでカティバゴンゴンルブスという組織を作ったとき、ギギはメンバーリクルートに
フェイスブックを使っている。

< オンライン式ラディカル化 >
アマチュアテロリストの間で起こっているオンライン式ラディカル化現象は、ふたつの要
因に乗っていると筆者は考える。

ひとつは、インターネットによる迅速なアクセス・隆盛なソスメド・スマートフォンの手
頃価格などが示している情報技術の存在だ。旧型テロリスト時代にラディカリズム普及は
特定の場所で行われるのが普通だった。特にアフガニスタン・南フィリピン・ポソ・アン
ボンなどのようなコンフリクト地域だ。更に、ひとりのテロリストを作り上げるのに年と
いう時間がかかった。ところが現代のアマチュアテロリストはアナーキーな情報世界で暮
らしている。その世界には秩序や統制がないのだ。[ 続く ]