「5月22日ジャカルタ暴動の総決算(終)」(2019年05月31日)

車内には救急車として備えられてあるべき医療器具や医薬品類が一切なく、自動車内に置
かれるべく義務付けられている救急医薬品箱すらないありさまで、その代わりに都内の数
カ所の戦場で使われたものと同じの白い石が満載されていた。

グリンドラ党は指令系統を通じて、22日の全国行動で負傷者が出るかもしれないとして
近隣の支部に救急車の応援を要請したそうだが、実態を見るならそんな釈明に耳を傾ける
人間などあるまい。ところがグリンドラ党本部は、治療行為に備えての救急車出動要請を
出した事実を公式表明した。タシッマラヤの正副書記長は党指示に違反して何者かへの協
力をしようとしたのか、それとも党本部から切り捨てられ、見放されたのか?
少なくとも、グリンドラ党が市街戦の発生を予期していたことが、その一事から見て取れ
るにちがいない。

警察はまたプタンブラン地区で、さまざまな個人名の書かれた現金入り封筒を多数押収し
た。封筒には20万から50万ルピアまでの現金が入っていた。また容疑者が持っていた
オペレーション経費としての5百万ルピアと2,470米ドルも押収されている。


5月22日の騒乱が総選挙の結果に反対する一般市民の暴動だという定義付けは、その騒
乱を計画した一派の思うつぼであることを、真実を求める人間は理解する必要があるにち
がいない。

数百人という怪我人の数と死者が出たことに関連して、海外の報道記事の中にインドネシ
アでのデモクラシーの実情を虚偽の姿へ導こうとするものがあることを、インドネシア政
府は既に察知している。デモクラシーの正義がインドネシアで行われていないという印象
を作り出し、世論をしてインドネシアの現状に非難の矛先を向けさせようとする画策がそ
れであるにちがいない。日本の世論がそのような一派に迎合することのないよう、願うば
かりだ。


ジャマアアンサルッダウラ(JAD)とダエシュを信奉する他のテログループによる爆弾
テロは、予想に反して何も起こらなかった。デンスス88による先制攻撃での抑え込みが
奏功したと言えるかもしれないが、22日騒乱の推移を見る限り、攻撃集団に自爆テロを
しかけることは警察を利する以外の何者にもならなかったのが明白だろう。

大量の一般市民によるデモと攻撃部隊の間に自爆テロが入ることによってマスの市民を攻
撃部隊への合力に誘導するという手法は、大量の一般市民が出て来なかったことから、行
うチャンスが失われてしまった。かれらは作戦を変えたはずだ。

警察は逮捕した257人を取り調べた結果、ダエシュを信奉するチアンジュルのラディカ
ル宗教団体の者がふたり、更にそのふたりとは別に拳銃を所持していた者が三人あったこ
とを公表した。21日夜から行われた警察に対する正面攻撃の戦闘員リクルートに応じた
者が地方部のプレマンばかりでなかったことをそれは意味しているように思われる。
[ 完 ]