「インドネシアで性転換手術(終)」(2019年06月20日)

だがネッティさんがインドネシア国民最初の性転換女性ではない。それに先んじること三
年の1972年にイワン・ルビアント・イスカンダルさんがシンガポールで性転換手術を
受け、裁判所に性別変更の申請を出して1973年に承認され、女性ヴィヴィアン・ルビ
アンティさんが誕生した。インドネシアがイスラム法国家でないことを明瞭に示すできご
とのひとつだろう。


1988年5月3日、スラバヤのドクトルストモ病院で24歳男性デディ・ユリアルディ
・アスハディさんの性転換手術が行われた。その年の10月24日にスラバヤ地裁は性別
変更の申請を承認し、女性ドルチェ・アスハディさんが登場した。コメディアンで歌手で
もあるドルチェ・ガマラマさんがかの女だ。

西スマトラ州ソロッで男児として生まれたが、成長と共に性同一性障害が深刻化し、性転
換手術を受けることでそれを乗り越えた。ドルチェさんは子供のころからステージに立っ
ており、性転換手術がマスコミの話題をさらってかの女を著名人にしたことから、ドルチ
ェ・ガマラマの芸名で芸能界のスターのひとりになった。


アグス・ウィドヨさんは2005年から三年かけて性転換をスマランに近いバタンの地方
総合病院で行い、2009年12月にバタン地方裁判所で性別変更が承認され、ナディア
・イルミラ・アルカデアという三十歳の女性が生まれた。


アヴィカ・ワリスマンさんは2015年にスラバヤのドクトルストモ病院で性転換手術を
受けた。そのとき22歳だった。かの女は男児として誕生したが男性器の発育は進まず、
女性ホルモンのほうが多かった。幼いころから友達は女の子ばかりで、学校に上がっても
家に帰ると男子の制服を脱ぎ捨て、スカートを穿いて遊びに出かけていたそうだ。

スラバヤ地裁は2018年11月に性別変更申請を承認し、アヴィカ・ワリスマンさんは
元々の名前のまま、男性から女性に変わった。

性転換手術を受けることなく、性別変更申請を裁判所に出すひとの数も増加しているよう
だ。だが裁判所判事によれば、性転換手術を受けていれば病院や医師からの証明や種々の
資料が得やすいために判決を下すのに時間がかからないが、そうでない場合には医療上の
諸資料がそろいにくいため判断がしにくく、判決に長い年月がかかるそうだ。
インドネシアのイスラムの実情のひとつはそんな様相をしている。[ 完 ]