「暴騰した国内線航空料金(前)」(2019年07月01日)

2018年11月にガルーダ航空グループがスリウィジャヤ航空グループとの共同事業契
約を結んだことで、国内線の幹線航路を飛ぶ大手はガルーダグループとライオン航空グル
ープのみとなり、国内空運業界は寡占状態が強まった。

18年12月のクリスマス〜年末のハイシーズンの航空券料金が尋常と思われない値上が
りを示したことが、消費者やマスコミの間で大きい話題になった。当然の結果として空運
旅客数は大きく減少した。ところが事は空運業界の中にとどまらなかった。国内諸観光地
で国内観光客が激減したのである。ホテル・レストラン業界ばかりか、土産物産業から地
元交通業者や観光サービス業者までもが、突然襲って来た閑古鳥に死活問題を訴えて来た。

ハイシーズンが終わった後、元の価格帯に料金が戻されるものとの期待とは裏腹に、多少
は下がっても昔のレンジには戻らなかった。料金は2018年の価格帯から明らかに10
0%近くまでジャンプアップしたのである。


中央統計庁データは、2019年4月の国内線空運旅客数は前年同月から28.5%ダウ
ンし、ホテル業界客室稼働率は57.4%から53.9%に低下したことを示している。
おまけに2019年5月のインフレ率の中に占める航空旅客運賃の比重は0.3%という
値を示した。前年同月は0.05%でしかない。

国内線航空料金に関する過去記事は次の通り。
http://indojoho.ciao.jp/2019/0115_2.htm
http://indojoho.ciao.jp/2019/0116_2.htm

業界大手の説明によれば、これまで低め料金が維持されてきたのは業界者の安売り競争が
原因であり、健全な経営体質を確保するためには現在の価格レンジが経済適性に合致して
いるのだというもので、つまりは安売りで客を集めるインドネシア型体質から脱出できる
業界の現状がその現象を招いたのだということになる。

その説明に対して経済調査機関専門家は、アジアパシフィックの平均的損益分岐点は67
〜69%のロードファクターであるにもかかわらず、インドネシアの空運会社は78%の
ロードファクターを誇っているのに赤字であるという異常なビジネス形態に首をかしげて
いる。

オンブズマンコミッショナーのひとりは旅客空運利用者について、国民人口の一割に満た
ない2千万人が利用しているだけであり、その大半は業務出張者であって個人利用者では
ないので、航空券料金は国民にとっての必需品とは言えないと語っている。


インドネシアの運輸業界には、料金戦争perang tarifという言葉がある。客を獲得する手
法は価格で始まって価格で終わるという言葉だ。結局のところ、客がそういう性向を持っ
ているために業者はそれに合わせているだけということなのかもしれない。軽重にかかわ
らず世界中どこでも行われていることだが、インドネシアでは特に激しい印象をわたしは
抱いている。要はクオリティ意識が低いのである。

インドネシアでは2000年の規制緩和によって大量空運時代が幕を開けた。35を超え
る航空会社がそのときに誕生した。航空機を3機持てば空運事業が行えた時代だ。そこで
は、エコノミー料金は自由競争原理が取り入れられた。

2002年には料金戦争状態がはじまった。それまでジャカルタ〜スラバヤの料金はひと
り76万ルピアだったものが、インドネシアエアライン39万、プリタエアー33万。ジ
ャカルタ〜バタムは85万ルピアだったものが、ライオンエアーとジャタユエアーは49.
9万、ボラッ40.5万。

「誰でも空を飛べる」というスローガンに乗って、1999年の年間乗客数637万人は
2002年に1,219万人、2003年には1,720万人に激増した。[ 続く ]