「スラウェシ島のリトルバリ(後)」(2019年07月12日) 半年ごとのガルガンGalunganとクニガンKuningan、知識と学問の神サラスワティSaraswa- tiの祝祭、罪を清めるシワラトリSiwalatriの日など、バリヒンドゥの祝祭は数多い。2 4時間の断食が定められている祝祭では、大勢がそれに従っている。 結婚式や葬式では、共同体構成員が相互扶助する伝統も守られている。薪・竹・米・鶏一 羽など、各家の経済力に応じて供出がなされ、祭に必要な資材が補われる。 だが、バリ島がヒンドゥ教徒だけの島でないのと同様に、宗教的閉鎖性はここにも見られ ない。ボラアンモゴンドウ県の地元で主流な宗教がキリスト教であるなら、バリ人の村が 近隣地域に対して開かれた村であるかぎり、宗教や文化の相互乗り入れは必ず発生する。 村には三つの大型ヒンドゥ寺院Pura Puseh, Pura Dalem, Pura Tirtaが威容を誇っている 傍ら、キリスト教会も村内の5カ所に建てられている。 ボラアンモゴンドウ県はこの村を県の観光資源として活用したい意向を固めている。農業 農園と畜産だけを産業とするこの村をエコ観光と文化観光の目的地にしようというのであ る。 たとえばバリ島でニュピ前夜のオゴオゴ祭を堪能したあと、観光客はその翌日、慰安娯楽 の何もないニュピの決まりに従わせられることになる。だがウルディアグン村のオゴオゴ 祭見物では、ニュピの決まりを実践するのは村人だけであり、観光客はその翌日も慰安娯 楽を求めてどこにでも行くことができる。村から一歩外に出れば、地元文化の尊重ががら りと姿を変えてしまうのは、県の企画に力強いメリットを添えるに違いあるまい。 村内で行われている音楽や舞踊などの習い事から、それら文化芸能の発露たる実演の場に 至るまで、観光対象としての魅力を持っているのは言うまでもない。また南ウルディアグ ン村で湧泉が発見され、ヒンドゥの聖水源としてプラティルタの域内に取り込まれている。 プラティルタの堂に上る階段の前で、その聖水で清めを行うのが登堂者の習慣だ。 県側はプラティルタをエコ観光目的地とし、その周辺の住民にホームステイ事業を勧める と共にツアーガイド教育も地元民に与えており、既に180人がその教育に参加したとの ことだ。 北スラウェシ州への観光旅行先がマナド〜ブナケン〜ビトゥンの線からずっと南まで下り て来るのは、うれしい話にちがいない。[ 完 ]