「ジレンマをもたらす国民テロリスト(3)」(2019年07月23日) とはいえ、ムフラスとアムロジの義理の弟であるアリ・ファウジのようにムハサバ(過去 の生き方の再評価)を行うのに成功した者にとって、善玉ウイルスになることは可能だ。 平和の輪財団の中でアリ・ファウジは、インドネシアのほとんどすべての刑務所にいるテ ロリズム犯罪服役囚のために法的支援とコンサルテーション活動を熱心に行っている。か れは東ジャワの有名な大学で博士課程を修業した。メダンでは、アフガニスタン同窓生で あるハイルル・ガザリがテロリズム犯罪服役囚の子供たちのために脱過激化教育を行うプ サントレンを運営している。 そのような展開を目にしているインドネシア政府は、ダエシュ/ISIS卒業生を抱え込 む自信に満ちているように思われる。改定テロリズム法が成立する前、インドネシア政府 は外務省インドネシア国民保護局を通じて、ダエシュ/ISISに参加していた女性と子 供をメインにするインドネシア国籍者18人の帰国プロセスを推進した。 その中のふたり、大人の男性、は入獄している。テロリズム対策国家庁の脱過激化プログ ラムを経たあと、残る16人は新たな人生の再出発への道を歩んだ。その中のナイラとダ ニアの姉弟やフェブリたちは誰に強制されることもなく自発意志で世の中に自己の姿を示 し、ダエシュ/ISISの嘘を告発した。別のひとりは高校を卒業して、バンドンの有名 大学に進学している。 <社会復帰の努力> 上のようなできごとは、それらをうまく取り扱うことができるなら、ダエシュ/ISIS 同窓生たちは善玉ウイルスとなる可能性を秘めていることを示している。最近強まってい る現在の多様性の形に対する拒否を防ぐ対策として、それは特に効果的だろう。カリフの イメージはとても流動的だ。ダエシュ/ISISがシリアで失敗したいま、そのイメージ はダエシュの追従者であるマラウィ、ボコハラム、アフガニスタンに至るまで拡散してい る。それゆえに、最近5人のインドネシア国籍者がクラサンKhurasan地域にカリフ国家が 出現するという呪文を信じ込んだためにアフガニスタンで逮捕されたのも不思議なことで はないのである。 ダエシュ/ISIS卒業生を善玉ウイルスにする構想はもちろん容易なものでない。なぜ なら世の中から烙印を捺されるということばかりか、更にはかれらがかつて抱いた過激思 想に戻って行かない保証すらないのだから。しかし社会的な対応としてこの善玉ウイルス 方式は決して新しいものでない。保健分野では既に行われていることがらになっている。 [ 続く ]