「テロリズム(前)」(2019年07月25日)

ライター: 意味論探究者、サムスディン・ブルリアン
ソース: 2015年1月31日付けコンパス紙 "Terorisme"

1789年のフランス革命はわれわれに「自由・平等・友愛」というスローガンをもたら
しただけではない。「テロリズム」という言葉ならびに、どのようにシステマチックにそ
れを行うかというお手本さえわれわれに示して見せた。1793年から1794年まで行
われた恐怖政治期La Terreurにフランス国は数万人を断首した。統治者のひとりは正直且
つ包み隠さずにこう述べた。「恐怖とは自然で、素朴で、強硬な以外の何者でもない。」
治安要員はテロリストterroristeと呼ばれたのである。

フランス語のterreurや英語のterrorはラテン語のテルロールterrorに由来しており、そ
の意味は「凄まじい恐怖」「激しい震え」「金縛りにする怖さ」「身の毛のよだつ・・
・・」、ああ、もう分かったから十分ですか。

テロリズムとはオックスフォード英語辞典によれば、「テロシステム」「その対象者に恐
怖を生じさせることを意図した方針」という語義になっている。システムと称するのは、
テロリズムが単に恐怖の存在だけを意味していないからだ。ひとりの個人がいきなりテロ
を行った場合、それはアモックと呼ばれるものになる。方針と言っているのは、テロリズ
ムには組織・戦術戦略・リクルートシステム・詳細で深い計画・複雑で正確な実践などと
いった要素がからんでいるからだ。中でも、テロリズムは常に政治的目標を持っている。

政治的目標とは何を意味しているのか?それは民衆を支配することである。テロリストは
テルロールを振り撒く。すなわち「死」「涙を誘うもの」「責め苦」そして「破滅」。テ
ロリストがテルロールを振り撒くのは、残虐性や他人の苦難を見て喜ぶ性向、あるいはた
またま気分がむしゃくしゃするから、などといったものでなく、究極目標としての政治支
配を目指しているからだ。だれが被害者になるのかはたいして重要でない。重要なのは世
界がそれを見て震撼することだ。それがテロリズム行為の多くをドラマチックで芝居がか
ったものにしている。頭を斬り落とし、ハイジャックした旅客機でビルを破壊するのであ
る。テロリズムを撲滅するのが容易でないのは、リーダーたちがたいへん合理的な人間で
あるがためだ。かれらは効果的なシステムを構築する能力を持つ怜悧な人間なのである。

その組織が異民族間に広がり、別の大陸にまで渡って行くのを見る限り、リーダーたちの
能力はたいへんなものだと言うことができる。


今や公衆の面前では、だれもがテロリズムに反対する。しかしひとりひとりの脳裏にある
テロリズムへの見解はバラバラだ。パリで風刺雑誌シャルリー・エブドに対する襲撃が行
われたとき、パリジャンをはじめ世界の大勢の人間がそれをテロリズム行為だと認識する
のに困難はなかった。ところがそれを英雄的行為だと称賛した者も少なくなかったのであ
る。どうしてそうなったのか?テロリズムが主観的なネガティブラベルになっているから
だ。実行者の政治目標に賛同しない人間にとってそれはテロリズムなのだが、その目標に
賛同する者にとってその行為は高貴なる闘争なのである。[ 続く ]