「老人たち(終)」(2019年07月26日) 今やインターネットは通信通話だけでなく、情報・保健サービス・銀行サービス・支払い ・買い物・交通などへのアクセスに至るまで、日常生活の隅々にまで入り込んでいるが、 この生活面における変化が老齢者にストレスをもたらしている。 「老齢者はスマホやインターネット通信機器の取り扱いに自信がない。」ある大学の老人 家族建設研究センター理事はそう語る。 スマホを持っている老齢者は少なくないのだが、たいていは電話機能とチャット機能だけ しか使われていないのが実態だそうだ。SMSバンキングやインターネットバンキングを 使うのは気が進まない。相手(担当職員)が目の前にいない場所で金銭取引を行うことに 信頼が置けないかれらは、銀行へ行って窓口の前に列をなすほうを好むのである。 文字だけのコミュニケーションも、かれらに安心感を抱かせない。オンラインチケットを 買えば、必ずプリントアウトしようとする。eメールやネットサイトで何かの催しへの参 加を申し込んだとき、電話をして係員から確認を取らなければ落ち着かないのである。 老齢者にとっては、日常生活におけるそのような変化が大人になってから起こったもので あることから、昔とは大きく変わったプロセスに落ち着かなさを感じ、それを行うことに 自信が持てないということなのだ。それは世界中に共通して言えることがらだ。 米国の2017年調査報告によれば、65歳超老齢者の11%はオンライン取引にまった く自信が持てず、23%がほんのちょっぴりだけ持てる、と答えた。更に、新型機種が出 ると誰かの助けがないとどうしようもないと73%が答えている。 老齢者にとってもっと悲惨なのは、インターネットに流れる生の虚偽欺瞞情報に直接対面 するようになったことだ。かれらの人生経験においては、情報というものは編集者や校正 者の手を通って流れて来る、高品質で信頼性の高いものが普通だった。 ところが今やだれでもが容易に、嘘、と言って悪ければ不完全で偏った情報をネット内に 書き込んで流すことができる。特にインドネシアでは、隠れた政治的な意図を秘めた社会 騒動を狙うホウクスの流通が大幅に強まっている。ソスメドに加わっている老齢者が善意 からホウクスをグループ内に広めようとする傾向にあることは、既に確認されていること だ。米国においても、若者世代より老齢者のほうがホウクス情報を伝達する傾向を持って いることが報じられているのである。[ 完 ]