「ハラルマーケットをつかめ!(前)」(2019年07月30日)

2017年に2.1兆米ドルの規模だった世界のハラル市場が2023年には3兆に達す
るだろう、とドゥバイとニューヨークに拠点を置くマーケットリサーチ会社ディナ―スタ
ンダードは予見している。これは食品・旅行・娯楽・衣服・医薬品・化粧品などの商品マ
ーケットについてのものであり、それにシャリア金融市場を加えると6.8兆米ドルに膨
れ上がる。

イギリスの著述家シェリナ・ジャンモハメッはそのマーケット拡大の推進要素のひとつを、
M世代に由来するものだと語る。M世代とは35歳未満のムスリムで、イスラムアイデン
ティティを誇りにし、活発で、クリエーティブで、デマンディングであり、旺盛な消費意
欲を持っている。

米国のピューリサーチセンターは世界のミドルクラスムスリムが2030年には9億人に
達すると予測している。いずこの土地であれ、ミドルクラスというのはデマンディングで
あり、消費的なのである。イスラム教徒が人口のマジョリティを占める国々の経済状況が
向上してきていることが、この現象を裏側で支えている。

イスラム世界の安定化が進み、若い人口が増加してミドルクラスが厚みを増して来れば、
かれらが消費するために要求するハラル商品の需要は間違いなく膨れ上がる。41年後に
世界のムスリム人口が30億人に達するのであれば、その市場に早急に手を付けておこう
とする発想こそが、経済人として当たり前の合理的な姿勢であると言えるにちがいあるま
い。


SGS社の市場リサーチ部門は、ハラル基準はムスリムにだけ意味のあることがらではな
い、とアドバイスする。多くの方面が誤解しているような、アルコールと豚の要素だけが
排除されていればよい、というレベルは既に過去のものと化していて、若いムスリム知識
人はハラル認証により高いレベルの条件を付加する方向性を明白に示している。

生産プロセスチェーンの中で、遺伝子操作された宗教禁忌とされている生物ばかりか、絶
滅危惧生物リストにある生き物の混入をもかれらは拒否している。それは、アッラーの創
造した大自然が人類にとっての恩寵であるというイスラム教義に背くものであるからだ。

ハラル基準を満たすことで生産者は、単なる宗教禁忌を超越し、エコロジーに配慮し、オ
ーガニックで、他の生物への残虐性を持たない製品や、ベジタリアン向け製品を生産して
いるという評価を得ることになる。その特徴は環境への配慮をますます深めるようになっ
ている一般消費者にとっての、ひとつの答えを提供するものであり、その意味からハラル
認証は単にイスラム教徒のためのものでしかないというものの見方への修正がいくつかの
国で起こっている。


現代のムスリム消費者は、たとえばムスリマについて言うなら、最新モードの華やかなフ
ァッションを身に着けてカフェでリラックスし、またビキニを着てビーチで泳ぎ日光浴す
ることを望んでいる。言うまでもなく、それらは男性オフリミットの公共施設でしか行う
ことができない。

公共空間に現れるムスリマが現在のような姿をしているのは男性がそこにいるからなので
あり、宗教教義が無条件でそれを女性に強いているわけでないことは理解されるべきこと
がらのひとつだろう。宗教教義はただひとつ、女性は男性にアウラッ(男性に性的興奮を
起こさせる女性の身体部位)を見せてはならないというものしかないのである。[ 続く ]