「ジャムゥ(3)」(2020年06月10日)

ジャムゥを使うことが、霊的側面が生み出している病気への対処方として有効であるとは
かぎらない。患者はより積極的な自己反省を行い、自己の霊的な姿勢や行いを改善して霊
的倫理に背かない生き方をすることがそこでは重視される。

黒魔術や呪術を除けるための除害材として、jimat, sarat, あるいはイスラミック・バリ
文字・古ジャワ文字のカリグラフィーが家の表門の上や呪いがかかったと思われる場所に
置かれる。

2.天然的側面のコンセプト
病気penyakitは熱い病気penyakit panasと冷たい病気penyakit dinginの二種類に区分さ
れることから、処方薬も熱い薬obat panasと冷たい薬obat dinginに分かれる。熱い病気
には冷たい薬、冷たい病気には熱い薬を用いて病を鎮めるのである。健康であるというの
は体内の熱い要素と冷たい要素のバランスと調和がよく保たれていることを意味している。
そのふたつの要素間の調和を作り出し、それを安定させるためにジャムゥが使われるとい
うことなのだ。

その効能を求めてジャムゥの調合法を発見してきた方法論として、次のようなものが挙げ
られている。
a. 神秘的方法
瞑想・祈祷・超越者への願い・啓示・ドゥクンへのお告げなどを通しての創造活動が調合
法を実現させた。そしてその調合法が口承(もしくは書物)で代々語り継がれてきた。中
には、世代交代の中で調合法がより完成されたものになった事例もある。

b. 生態学的方法
動物の生態を観察した結果得られた知識を使って作られたもの。たとえば蛇に噛まれたサ
ルが慌ててある植物(解毒剤)を探す姿、犬が消化促進のために木炭を食べる姿、猫がジ
ャムゥとして特定の草を食べる姿などが人間にヒントを与え、人間が試してみることでそ
の効能が確定されるプロセスが起こった。

あるいはまた、形態学的観察に由来するものもあり、たとえば心臓の形をしている葉は心
臓に薬効があるのではないかという考えを試してみたり、daun ilerやsambang getihのよ
うな赤色の葉は出血に効能があるのではないかという推測に基づいて試してみることも行
われた。

c. 偶発的方法
プテpeteの実はアリの大好物であるにもかかわらず、その樹の皮をアリは嫌うことにラン
バン・スプラナが気付き、プテの樹皮は糖尿病に効果があることが発見された。あるいは
トゥンプユンtempuyungの葉が尿結石の薬効を持っていることをサルジト医師が発見した。

d. 人体化石学的方法
特定の社会集団が行っている文化習慣的行為を観察して導かれた結論がジャムゥに応用さ
れた。シリの葉を噛む習慣を持っている社会集団では、ひとびとは強固な歯と歯茎を持っ
ていることが観察の結果判明している。あるいは西ジャワ社会で食事の際に野菜のlalap
を食べる習慣が、スンダ人に高血圧が少ないという結果を生んでいることなど。

e. 試行錯誤的方法

f. シナジー的方法
[ 続く ]