「ジャムゥ(5)」(2020年06月12日)

このグローバリゼーション時代、中国の伝統医薬や健康食品の形で入って来る西洋伝統医
薬の流入をインドネシアは免れることができない。インドネシアのジャムゥに比べて中国
や西洋のジャムゥは、科学面での学術的公式権威や自立的海外移住者の分布というような
政治的文化的優位を持っている。

中国とインドでは、ふたつの公式保健サービスのコースを国の保健政策が用意している。
ひとつは東洋伝統医療に沿ったもの、もうひとつは西洋型ファーマシー方式のもので、そ
れぞれは理論があり、学術的科学的な職業がそこに関わっていて、相互に自立できる態勢
が作られている。

インドネシアで公的保健サービスは単一型、もっと言うなら西洋伝統型ファーマシーの独
占形態になっている。インドネシアの伝統音楽や衣装に関するフォーマル教育の道が設け
られている一方で、国民子弟に外国の同じ分野で活動しているひとびとと矜持を持って並
び立つための、インドネシア伝統医薬の用法や調合の職業教育をかれらに施す公的行政的
教育機関はいまだに存在しないのだ。とはいえ、研究開発が停滞しているということでも
ない。保健省が提案している西洋式学術科学的コース、つまり大学との協力を通してジャ
ムゥ生産者たちはファーマシー学術理論に沿ったインドネシア伝統医薬の研究開発、中で
もフィトファーマシーという分野の中でのそれに余念がない

毒素学メソッドは既にすべてのジャムゥ製造工場で品質管理面に用いられており、保健省
インドネシア伝統医薬監督局がその実践を管理している。業界の産業開発のうねりは、大
衆に根を置く薬草活用運動を生み出している。

< 第三ミレニアム >
第三ミレニアムにおけるジャムゥ産業の将来は、最近起こっている次のような社会心理環
境の変化や、社会文化ならびに自然環境の変化に支えられて、十分に明るいと結論付ける
ことができるだろう。たとえば:
a) 自然への回帰運動
全知全能の造物主は自然の中にあるすべての病にとっての薬剤を自然の中に用意したので
ある。ところが有限なる人知と解釈能力のために、人類はいまだにそのすべてを解き明か
すに至っていない。
b) 人間の作り出すファーマシー医薬品の限界と副作用に対する認識
c) 人間の健康維持分野における東洋医学の能力に対して世界の認識が深まっていること
d) 地球上にある熱帯雨林で第二の広さを占めているヌサンタラの楽園が豊かに持ってい
る天然資源。薬効がまだ調査されていない植物の数ははかり知れない。


   しかしそのような誘導的環境の裏側には、ジャムゥ産業の将来の発展を阻害するか
もしれない要素が同じように存在している。たとえば:
a) 軽視できないほど強大な資本ソースの潜在性を秘めたファーマシー産業との直接的な
対決
b) 中国・韓国・インドなどの外国、さらには自然回帰を果たした西洋諸国がもたらす伝
統医薬製品との競合
c) 社会心理的事実としての、何世紀にもわたって植民地主義者に虐げられてきたインド
ネシア社会の持っている、外国製品が国内産品より優れていると狂信的に確信する傾向が
もたらす外国かぶれ姿勢やビヘイビア
d) ジャムゥが内在的に抱えている非西洋科学的性格がファーマシー医薬品のような西洋
科学的証明を困難にしていることが、社会のジャムゥに対する確信を空洞化させている。
西洋科学文化の薫陶を受けた国民にはなおさらだ。自然の薬効を身上とするジャムゥはそ
う簡単に科学分析の対象になり得ない。[ 続く ]