「香茶はインドネシアのオリジナル(前)」(2020年07月20日)

Balap, Sintren, Nyapu, Lucu, Dandang, Gopek, Petjut, Tjatoet, Tang, Ketongan, 999, 
Tong Tji, Poci, Botol, Bandul, Naga, Goalpara, Sarawaita, Pendawa, Melati, Gardu, 
Kepala Jenggot, Jawa, 2Tang, ・・・まだまだ続く。
それらは一般庶民向けローカル茶のブランドだ。

ジャカルタやバリのハイパーやスーパーで目にするものもあるが、果たしてどれだけのブ
ランドを目や耳にしたことがあるだろうか?それらはすべてインドネシアで言われるとこ
ろの、香茶teh wangiなのである。

インドネシア人が香茶と呼ぶものはすべてジャスミンの花が混ぜられたジャスミンティー
だ。だからもちろん香茶をteh melatiと呼ぶ人もいて、それらは同義語関係になっている。

ジャスミンの花が混ぜられるのは、茶葉の低品質をカバーするためだと2015年8月9
日付けコンパス紙記事KENANGAN DALAM SECANGKIR TEH WANGIは謳っているから、やはりそ
れが民族的な常識なのだろう。こうして香茶がインドネシア庶民層の国民的飲料となった。

どうやら香茶の位置付けは、香りを楽しむものであって茶の味わいを楽しむのではないも
のにされているようだ。とは言うものの、わたし個人は上のようなローカルブランドの中
で味の良いものを見つけ出している。低級茶葉の中でそれなりに選び抜かれたものが使わ
れていれば、それなりのうまさを楽しむこともできるはずではないだろうか。

香茶はインドネシアで一般庶民層の間から生まれ出て来た民族的な産物だ。高級茶葉がす
べて輸出や上流階層の食卓に回されて、一般庶民層には低級茶葉しか回って来ないのであ
れば、それを何とかしようとする創造性が発揮されて当然だ。


香茶は未加工の茶葉と新鮮なジャスミンの花で作る。香茶の製造工程は緑茶より長い。緑
茶のように煎って加熱するだけでなく、葉がもっと黒くなるように火で焙り、その後でジ
ャスミンの花を混ぜる。工程が長いからコストは緑茶より高くなるものの、消費者層の購
買力を無視することはできない。結局高いコストの香茶を廉く販売しなければならないと
いう矛盾をこの商品はかこっている。

インドネシアの農民茶畑もたいていはアッサム種の茶木が植えられていて、この茶葉が香
茶に一番適しているのだそうだ。香茶製造者は仕入れる茶葉の品質をもちろんチェックす
る。茎と茶葉の比率もそのひとつで、茎が5〜10%混じっているものが妥当とされてい
る。茎の量がもっと少ないと苦みが低下する。苦みは香茶愛好者の重要な要素のひとつな
のだから、製造者はその要素をおろそかにできないのである。

香茶は民族文化の結晶であり、インドネシア民族が世界に誇れる民族文化の産物なのだと
業界リーダーは語る。インドネシアの香茶は一般的に小規模なファミリー会社が代々伝え
られてきた製法に従って生産している。それぞれの生産者は他者のまねをせず、独自の調
合と製法でそれぞれ異なる風味の香茶を世に送っているため、消費者は自分の好みに合う
ものを選んで愛用するようになる。


中部ジャワ州ソロでは多くの消費者が、数種類の異なるブランドをミックスして自宅の風
味を作り出し、それを家伝にしているところもあるそうで、ジャスミンティ―でそこまで
通になれるのも大したものだと言えよう。

ソロ出身で今バリに住んでいるリニさん39歳は、幼いころからソロで培った香茶の習慣
を崩そうとしない。湯気の立っている赤茶色の液体とかぐわしいジャスミンの香り。それ
を口に入れると熱さと苦みと甘さが入り混じって、えもいわれない幸福感が全身を包む。
[ 続く ]