「ヌサンタラのフランス人(6)」(2020年08月15日)

原住民の体格は概して背が高く、中には素晴らしい体躯の者もいる。もちろん全員という
わけではない。かれらの肌はギニア人のように真っ黒でなく、鼻がぺちゃんこでもない。
かれらの肌の色は黄色や茶色であり、大嘘つきのペテン師だ。

男たちはたいてい、布を腰に巻き付けて性器を隠しているが、他の部分はむき出しにして
いる。王族や商人は綿や絹の布を巻き付けて膝まで覆い、幅の広い帽子のようなものをか
ぶっている。上衣も袖の幅広なものを着るが、前面は開いたままだ。女性はたいてい綿布
で腰から膝まで覆い、別の布を一枚使って胸から腰までを覆っている。しかし胸を隠さな
い女性もいるし、布を肩から羽織って胸の一部を隠しているだけの女性もいる。髪を短く
しているから、頭には何もかぶらない。


ここの王は年齢が63歳で、在位18年になる。かれは以前、ただの漁師だったが、勇気
があったので前の王の側近に侍ることになった。そしてしばらくしてから前の王を殺して
王位に就いた。だから今の王は自分が同じ目に会わないよう、側近をひとりも置かない。
王の警護に当たっているのは女の警備兵部隊だ。剣と火縄銃がかの女らの武器で、その腕
前は男と遜色がない。王の身の回りから業務一切の世話をするのはすべて女性であり、男
はひとりもいない。王の世話は一週間に2シフトで交代している。

王の正妻はふたりいて、子供を四人産んだ。男子二人、女子二人だ。長男は王位継承者で
あり、父王がいないときは代理を務めるが、父王がいるときは何の権限も持っていない。
次男はペディールを治めている。

王は全国から娘を手に入れて妾にした。その数は三百人以上にのぼる。ただ、この王は妾
を蓄えないで、伽をさせたら部下に下げ渡した。いくばくかの金をつけてやるが、財産に
なるほどのものではない。自分の支配下に金持ちがいるのを王は許せないのだ。だからど
んな些細な手落ちでも、それを罪と言い立てて金持ちから財産を没収する。手落ちが見つ
からなければ罪をでっちあげて言い立て、「腕を切り落とす」「ウエー島やゴメス島に流
罪にする」といった判決を下して財産を没収する。

王は闘鶏が好きで、王族や部下はみんな闘鶏用ニワトリを飼っている。闘鶏が行われると
き、王は勝ったニワトリに多額のほうびを与える。王族はステータスを示すために親指と
小指の爪を長く伸ばしている。そうやって肉体労働などしない自分のステータスを誇示し
ているのだ。かれらが座る時は床に胡坐をかいて座る。かれらのあいさつは額の前で手を
合わせる形だから、われわれは脱帽したことがない。


原住民の男は経済力があれば7人まで妻を持つことができる。結婚の祝祭を行うときに新
郎は金を持ってきて新婦の親に渡す。結婚したら妻は厳重に監視されて、他の男と会うこ
とは許されない。新郎が新婦に愛想を尽かしたら、一週間以内に実家へ返して破談にする
ことができる。

外国人がこの地方に住む場合、同じ方法で妻を持てる。外国人が居留をやめて引き払うと
き、妻を実家に帰すのは問題がない。そのために騒ぎが起こることはないのである。

妻たちは毎晩、夜になると木の撥で叩く太鼓のリズムに合わせて踊り、歌う。そのときに
一番上手にできて夫が気に入った妻が、その夜は夫とふしどを共にする。

夫たちは家庭内で使う者をすべて買う。妻・使用人・奴隷。そしていつでも家から追い出
すことができる。他に妾を持っている場合、妾は別の男に売る。家庭内で使う使用人には
男もいるが、男の使用人はみんな去勢されている。そうしてはじめて、財産や妻の世話を
かれらに任せることができる。[ 続く ]