「ヌサンタラのフランス人(7)」(2020年08月16日)

娘たちは結婚前に、相手がだれであろうと好きな男に身を任せてよい。そのときに金を取
る。その婚前性交は娘を妻にと望む相手との結婚の障害にならない。

女たちは頭に何もかぶらず、頭髪を後で結ぶ。中には短髪の者もいて、男と見分けがつか
ない。そのときは胸を見ることになる。かの女たちは結婚したら、夫以外の男に絶対近寄
ろうとしない。死刑もしくは鼻や耳を切り落とされるのが怖いのだ。不倫を犯した男女は、
象に乗って操る者の命令一下、象に踏みつぶされるのである。

路上で女性に出会ったとき、われわれは婦人への敬意を示すことを控えなければならない。
それを知らないでその女に近寄ったり、一緒に歩いたりすると、女はその者を罵り、唾を
吐きかけてくる。

王の妻を見つめてはならず、王妃が乗っている場合はその象さえ見てはならない。そんな
ことをすれば、その男は目玉を繰りぬかれ、性器まで切り落とされてしまう。

女たちは耳朶に穴をあけて、指四本分の物をそこに通す。また耳の軟骨にも小さい穴をあ
けて、そこに花を挿す。かの女たちは銅・ピューター・銀の腕輪を着けている。薬指に指
輪をしている女もいる。


食事は質素だ。主食は水だけ使って炊いた飯で、バナナとヤシが主要果実。それはバナナ
とヤシが一年中採れるからであり、他の果実は季節性があって同じように扱えない。そし
て水牛の肉を食べる。中でも黒水牛は力が湧くと考えられているようで、特に好まれてい
るが、われわれ外国人には全然おいしくない。飲み物は一般的に水だ。かれらはアラッを
作り、それを飲んで酔っ払う。食器はいつもきれいに洗ってある。

男たちは小便するとき、女のように地面にしゃがんで行う。われわれが違う方法で小便す
るのを見たかれらは、まるで悪事が行なわれているのを目にしたかのように怒声をあげた。
まずいことが起こると困るので、われわれもかれらの方法に従うことにした。かれらは排
泄が終わると左手で性器を扱い、左手を洗っている。大便のときも同じようにしていた。

かれらは川で水浴を行う。川の水は澄んでいて、きれいだ。かれらが傷を負ったり、身体
の一部が切られたときも、川の水で痛みを鎮めている。裁判の判決のせいで、身体の一部
が切られるのは、ここでは日常茶飯事なのだ。切られたあと、その部分を一時間ほど川の
水に浸す。そうしてから、薬効のある葉で傷口を覆う。そんなやり方で、傷はほんの数日
で癒える。

かれらは毎日、朝夕水浴する。川には常に、何人もの老若男女が素っ裸で水の中にいる。
かれらにとっては当たり前のことで、気おくれや恥ずかしさなどはまったく見られない。
楽しそうに水中で遊び、笑い声を立てている。気温が高いときは水から出て、小さい柑橘
類を半割りにしたもので体中をこすり、肌をフレッシュ且つきれいにしている。時間に余
裕のある女性たちは、長い時間を川水の中で過ごしている。

川の水はとても澄んでいる。多分、山から下って来た水は砂漠を通り、さまざまな木々の
生い茂った森林を通ってここまでやってくる間に、森林の中にあるさまざまな樹種の影響
を受けるのだろう。木々の中には乳香kemenyan、樟脳kamper、白檀cendanaなどの香木も
たくさん混じっている。それがここの水の品質を素晴らしいものにしているのではないだ
ろうか。われわれは帰りの航海にここの水をたっぷり船に積んで使っていたが、5カ月間
の航海で変質は起こらなかった。よその水は木の容器に入れておくと12日目に腐り始め
る。

女性たちは身体が良い香りになるように、アロエベラlidah buaya、白檀cendana、コブミ
カンjerukpurutなどの芳香性の植物をすりつぶして水に浸し、それで身体のあちこちをこ
する。[ 続く ]