「ヌサンタラのフランス人(36)」(2020年09月14日)

華人問題はさまざまなアスペクトを抱えている。ヨーロッパ人よりも勤勉・倹約・技能優
秀であらゆる面での競争相手になっているという唯一の欠点を持つかれらを敵視するため
の理由付けに傾くわれわれの偽善性は、もっと広い心で対処するように変えるべきだ。わ
れわれがかれらを性質の頑なさ、生命力の旺盛さ、モラル欠如型ライフスタイルや強要的
といった角度から批評するのは、抑圧され恐怖におびえている種族に対して行われる悲劇
だろう。

華人はたくさんの能力を持っており、東インドでわれわれが見出す様々な状況にすぐに自
己を適応させる。かれらが就く職業のもっとも一般的なものは職人と商人だ。しかしカリ
マンタンでは苦力になり、スマトラでは鉱夫にもなり、そして庭師もすれば土砂運び人足
もし、村落部で建築作業者にもなり、またそのオーナーにもなっている。

トンキン、香港、上海に住む者の中には、サービス業従事者や家庭プンバントゥになって
ヨーロッパ人社会の中に身を置く者もいる。かれらは雇用者に対してとても注意深くまた
巧みに仕えるので、かれらのサービスを知った後、他の種族を雇うヨーロッパ人はいなく
なる。

ところがジャワ島にいる同じ種族の人間はヨーロッパ人に仕えることを拒む。ホテルの職
員やルームボーイになる者はいない。反対にかれらはスタッフ、会計係、監督人などにな
る。オランダ人はかれらを怖れている。政府はかれらに対して警戒している。ところが銀
行や大会社で華人の掌握する支店を地方部に持たないところは、真の大会社や大銀行とは
言えないのだ。華人たちはそんな場所で、適切な注意を払い、妥当なサービスを穏やかに
行っている。

華人が就く仕事の中で、ジャワ人やヨーロッパ人と競合しない分野もある。それは阿片農
園であり、馬交換ポストや貯水槽を持つ農園、ギャンブル性が高く忠実さを求められる職
業、家畜屠殺場などだ。われわれはそのような分野における原理を知っている。コンセッ
ションや入札によって、たいてい政府に一定の税を納めるのがその特徴であり、農園主に
は独占権が与えられる。政府が農園から税を徴収するときはたいへんな苦労が待ち受けて
いる。そのような方式を執らない場合は国有会社が取って代わったり、あるいは直接税方
式にされる。

プリブミ社会と混じり合って生活する巧みさで、華人の右に出る者はいない。プリブミの
言葉を話し、分かち合い譲り合って生活し、信頼を受けるのである。かれらは自己の欲求
の充足に向かって精力的に動き、挙句の果てに決まりを破るためにより重い条件が課され
る結果を招くのが普通だ。


もっとも嫌気がさすのは、華人大商人たちだ。かれらはたいてい、この地にやって来て最
底辺の仕事からキャリアを開始し、そしてたいがい新興成金になり上がった。

故国を去ってジャワのどこかの地方に移住し、そこの華人社会に入って同種族の者たちと
一緒に苦力になったり、見習い奉公をしたりして、移住に要した旅費その他の借金の返済
にあてる。それは18カ月から24カ月かかる。その間にかれらは仕事の要領を覚えてし
まう。借金が返済され、見習い奉公が卒業できたら、次は貯蓄に移る。自立するための商
売の元手を作ろうとして、倹約生活に励む。そして一番売れ行きの良い商品を華人やヨー
ロッパ人から仕入れるのである。現金一括払いもあれば、分割払いもある。

それからは、その商品を担いでいくつかの地方を巡回販売する。重い荷を担ぐ苦労も、門
前払いする消費者も、かれの意欲をくじくものではない。かれは朝から晩まで歩き回り、
微笑みを絶やさず、消費者の心をつかもうと努力し続ける。そうしてもっとも人気のある
巡回商人として、その地方で定評を得るに至る。[ 続く ]