「豊かな飯のバリエーション(2)」(2020年11月10日)

6x5メートルのサイフルさんの家屋の台所で、妻のワリアティさん35歳がオイェッ作
りに励んでいた。潰したシンコンから粒々を作っているのだ。この一家は政府の貧困者対
策援助米を廉価に購入している。パサルでの最低級米の平常価格がキロ当たり3千ルピア
で売られているが、ひと月9キロの援助米割当て分は1万2千ルピアで手に入る。

9キロのコメを白飯にして消費すれば一週間ももたない。オイェッと混ぜて消費すれば2
0日はもつ。残る10日間はパサルでキロ3千3百ルピアのコメを買って来てオイェッに
混ぜている。

隣村のシンパンプマタン村に住むジュミラさん34歳は、主食はずっと昔からオイェッと
コメを混ぜたものだと語る。オイェッも自分で作らず、パサルで買っている。キロ当たり
1千5百ルピアだ。このお宅もひと月9キロの援助米を1万3千ルピアで購入している。
援助米をコメの飯にして食べれば5日でなくなるが、オイェッに混ぜて10日もたしてい
るとの話だ。「栄養がどうかまでとても考えが及びません。ともかく家族を腹いっぱい食
べさせてやらなきゃ。」


オイェッが主食と化しているトゥランバワン県に住む数千人の消費者の一部がかれらなの
である。スカアグン村第3隣組長ナスルディン氏42歳は、住民の多くがオイェッを食べ
ているのは生活維持のためだと語る。トランスミグラシで別の村に来たひとびとの内25
世帯がこの第3隣組に移って来た。かれらは例外なくオイェッを食べている。

シンパンプマタン村の家族計画指導員アズワル氏によれば、台所の火力が薪であり、主食
がオイェッであることが貧困村を象徴しているのだそうだ。「この村の9,941戸のう
ち5,547戸が貧困家庭に認定されています。食糧入手の資金が十分にないためにコメ
とオイェッを混ぜて食べざるを得ない。しかしオイェッ飯では一日2千1百カロリーの熱
量摂取ができません。」

オイェッは主食に適さないという意見は確かに存在している。地元行政高官の中には、オ
イェッはスナックだという見方をしている人もいる。だが当事者たちは貧しいために仕方
がないことだという反応を示す。カンプンリマ村住民のムストファさんは言う。「コメの
飯に比べたら、オイェッが不味いのは言うまでもありません。かと言って、毎日白飯を食
べられるだけの余裕があるわけでもないですから。」

1973年にトランスミグラシでこの村に移住して来たガリマンさん56歳は、村に住む
ようになった最初からオイェッ飯を食べ続けて現在まで来た、と語っている。

カンプンリマのオイェッ飯は4〜5月の収穫期から7月ごろまでを除いて、ほぼ一年中大
半の住民の主食になっている。それも4〜5月の収穫が豊作であった時だけだ。その時期
に不作凶作が起これば、一年中オイェッ飯の切れ目がなくなる。


シンコンを素材にするこのオイェッは中部ジャワ州バニュマスBanyumas方言でオヤッoyak、
もっとヨグヤカルタ寄りの地方へ行くとティウルtiwulという名前で呼ばれている。ティ
ウルにコメを混ぜたティウル飯nasi tiwulはオイェッ飯と同じものだ。コメがなければテ
ィウルだけを飯の代わりに食べることもある。またティウルだけを間食として食べること
もする。昨今ではインスタントティウルも開発されていて、コメの代用食品の風格十分と
いうところだ。[ 続く ]