「続・ヌサンタラの酒(2)」(2021年01月07日)

チャルバンの家内工業で作られているブルムは、こんな製法だそうだ。
1.モチ米・イースト・重曹を用意する
2.モチ米を洗い、水に漬ける
3.モチ米をおよそ一時間蒸す
4.イーストを加えて発酵プロセスを七日七晩行う
5.できたタぺクタンtape ketanを搾って水分を取り分ける
6.タぺクタンを熱して濃くする
7.濃くなったものを専用ミキサーに入れて、重曹を加える
8.そのドウを型に入れて一日置く
9.密度が高まったものを天日干しして乾燥させる
天日干しは三日、オーブンを使えばもっと早い

マディウンの固形ブルム菓子は薄い長方形の、板チョコを大きくしたような平板形で、色
は黄色がかった白色だ。ウォノギリのブルムは白いから、一目で見分けがつく。


カリアブのある生産者は毎日100キログラムのブルムを生産している。家族だけでなく
三人の村人を雇って生産しており、雇用者は日給制にしてあって、ひと月無休で働けば最
低賃金に近いレベルになるとのことだ。製品は仲介業者やブランドを持つ大型販売業者に
卸される。

小売り用パッケージングは販売者が行うため、生産者は簡易包装の形で製品を送り出す。
生産者は卸売り価格からおよそ3割のマージンが手に入るので、地方村落部にしてはかな
り巨額の経済が動いていると言える。

中でもブルムの最需要期はルバランであり、ルバラン帰省したひとびとが土産にたくさん
持ち帰るために生産が追いつかない。あるマディウン市内の製造販売店では、ルバラン帰
省逆流が始まり出すと、店内は購買客でごった返す。一日100人くらいがやってくるそ
うだ。しかし店側は平素から取引のある相手への卸を優先するため、店へ来た客が空っぽ
のショーケースを見てむなしく引き返すというシーンがよく起こる。

この最繁忙期が近付くと、その店は普段の生産量1万箱を1.5から2万箱に引き上げる
のだが、それでも焼け石に水のようなありさまだ。マディウンの生産者はどこでも、だい
たいそのくらいを生産しているという話だ。県外への卸販売はソロ・スラバヤ・ヨグヤカ
ルタ・クドゥスなどがお得意先になっている。


マディウン県庁商工観光局中小事業コペラシ課の2013年データによれば、県下のブル
ム製造事業所は60あって、およそ5百人が雇用されているとのことだ。販売所・店舗に
ついては、ブルムだけを扱っている専門店から土産物店や雑貨食料品店まで入れて県下に
はおよそ100の販売ポイントがあり、更に店を構えずバスターミナルや駅などで行商風
に販売に携わっている者たちもたくさんこの産業の恩恵をこうむっている。

マディウンのブルム産業は県の経済から見るとたいへん有意義なものになっていて、業界
もイノベーションに余念がない。固形菓子の味の多様化は言うまでもなく、中には液体ブ
ルムの製造に成功した生産者もいて、バリ島に製品が出荷されているとのことだ。
[ 続く ]