「ジャワ豹(2)」(2021年01月19日)

人間は隠れ住んでいるかれらを探してまで危害を加えようとはしないものの、かれらに家
畜のヤギやニワトリを食われたら報復の挙に出る。殺すか、あるいは小さければ捕獲して
飼う。被害を受けた住民はそれが自分の権利だと考えるのだ。だからヒョウを山から下り
て来させないようにするための知恵を動物園側は住民に指導している。

そのひとつはトラの糞をヒョウの通り道に撒くことだそうだ。そうするとかれらは自分よ
り強い大型獣を怖れて下りて来なくなる。しかしもっと根本的な問題として、住民にヒョ
ウの食料になるイノシシ・オナガザル・ヤマアラシなどの捕獲をやめるよう指導している。
いくらヒョウを怖がらせても、空腹をいつまでも我慢させることは無理だからだ。


2012年にもヒョウが山から下りて来た。クニガン県カラパグヌンで10月17日、チ
ルマイCiremaiの森林からおよそ10キロ離れた住民部落で鶏小屋を襲って食べていたヒ
ョウを部落民が捕まえてチクンブラン動物園に提出した。このヒョウはおよそ3歳で、体
長2メートル、体重60キロの大型のものだった。

乾季が長引くと、森林の中の水や餌になる食べ物が減少し、ヒョウは往々にして人家のあ
る場所へやってくる。続いて11月6日にはチアミス県チトゥンク部落で、住民が飼って
いるヤギを捕食していたヒョウが部落民たちに殺される事件が起こった。この死んだヒョ
ウも年齢3歳くらいで体長は1.5メートルだった。

この事件は部落民もヒョウも互いに相手を怖がり、歯向かう野獣に人間側が集団で過剰な
行動を取ったために起こった悲惨な結末だったことから、天然資源保存館は部落民に適切
な対処方法の指導を与えている。

ヒョウはたいていが兄弟姉妹を持っていて、中の一頭が戻って来ないとそれを探しにやっ
てくるため、近いうちにまたヒョウがやってくる可能性が高いとのことだ。


2013年にもヒョウと人間のコンフリクトが起こった。中部ジャワ州チラチャップ県ク
タアグン村で9月28日、森から出て来たヒョウが部落から5百メートルほど離れた場所
に仕掛けられたイノシシ用の罠にかかっているのが発見された。乾季で森の中の水が干上
がったために安全圏から外に出たと見られている。

住民は畑を荒らしに来るイノシシを捕まえるために数カ所に罠をしかけており、ヒョウは
そのひとつに掛かってしまった。5歳くらいと見られるこのヒョウはバンジャルヌガラ県
スルリンマス動物園に収容された。だが罠にかかったときに腹に深い損傷を受け、最終的
に動物園で死亡した。

西ジャワ州チアミス県では、山から出て来たヒョウを捕獲して殺し、肉を食べ、皮をはい
で売ろうとしていた住民が逮捕されている。また東ジャワでもスムルSemeru山系の中で人
間の生活領域に進入したヒョウを警官が銃撃して殺す事件が起こった。警察側はその行動
について、保安のためだったと釈明している。


10月には西ジャワ州スカブミ県ギリムッティ村で、住民の飼っていた羊4頭が食い殺さ
れているのを朝起きた住民が見つけて届け出た。その事件の一週間ほど前にヒョウがかな
り離れた別の場所で捕獲されており、別のヒョウのしわざであることは明白だ。

天然資源保存館は、ギリムッティ村に近い山岳森林地区には4〜5頭のヒョウが住んでい
ると推測している。しかし企業や住民による茶農園やゴム農園の開墾、あるいは近隣住民
による耕作地化のためにヒョウが人間に近付く機会が増加している。中でも、人間が作る
畑を狙ってイノシシがやってくると、そのイノシシを捕食しようとヒョウがその後を追っ
てやって来るのである。そうなれば、畑を作ったらイノシシの心配だけしていればいいと
いうことにならない。[ 続く ]