「スマトラトラ(11)」(2021年02月17日)

ランプン州保存館が2011年に摘発した類似の事件はこれで4回目になる。ランプン州
には保護動物が棲息する国立公園が東と西にそれぞれあり、またスマトラ島南端でジャカ
ルタに近いため、密猟も盛んなら解体パーツ売買も盛んで、解体パーツの売買に限って言
うなら、スマトラ島で一番盛んな州だと見られている。

捕まったふたりは取り調べに対し、自分たちは知り合いに頼まれて渡された品物を売って
いただけであり、密猟から小売りに至る経路や内情はまったく知らないと述べている。か
れらは州西部にある南ブキッバリサン国立公園にほど近いタンガムスの住民で、トラと黒
豹はその公園内の森林で狩られたことを推測させている。

トラの皮の売値は一枚5〜30万ルピアで、売人の手数料は一枚5万ルピアだとかれらは
自供しているそうだが、コンパス紙のこの記事は誤植があるのではあるまいか。


同じ3月にジャンビ州東タンジュンジャブン県アイリタムラウッ村にある住民所有のパー
ムヤシ農園で3週間のうちにトラ2頭が高圧電線に接触して死ぬ事件が発生した。その2
頭はブルバッ国立公園に棲息していたトラと見られ、雨季で多雨になっているため泥炭土
が水浸しになり、トラがもっと棲息に適した環境を求めて移動しているときに高圧線に触
れてしまったのではないかと州天然資源保存館は推測している。

2頭目の死は3月21日に起こり、パームヤシ農園を横断しようとした体長1.5メート
ル体高82センチのトラが高圧線に掛かって死んでいるのを住民が発見している。保存館
側は住民に対し、保護動物がもっと死ぬ可能性が高いので、高圧線は撤去するべきだ、と
呼び掛けている。


2011年4月、南スマトラ州バニュアシン県にあるスンブルヒジャウプルマイ社の産業
林で作業員がふたりトラに襲われて死亡する事件が起こり、同社はヤギを囮にして鋼鉄製
の罠を用意し、体重75キロの雌トラを生け捕った。このトラは同社の監視下に置かれて
プトリと名付けられた。南スマトラ州天然資源保存館はプトリを安全な自然林に放すこと
を決め、最終的に南スマトラ州バニュアシン県スンビランSembilang国立公園で8月2日、
森林大臣列席のもとにプトリを自然に解き放つ式典が行われた。

スンビラン国立公園内のベテッBetet島は原生林に覆われた完全な無人島であり、しかも
鹿やイノシシが棲息しているのでトラの食料は十分にある。野生トラの保護区としては申
し分のない場所だから、利用していただけるなら歓迎すると同公園管理館は述べている。

パレンバンからスピードボートで往復10時間かかるベテッ島に大臣から関係者一同、そ
して報道陣が大挙押し寄せ、6千米ドルの特注GPS発信機を首に巻き付けたプトリが檻
から出されて森林に走り去る10秒間を全員の眼とカメラが見守った。


10月15日、西スマトラ州パダンパリアマン県コロンクリエッの森林でトラがイノシシ
用の罠にかかって暴れているのが見つかり、イノシシ猟師が射殺した。トラの死骸は森か
ら担ぎ出されて部落内の礼拝所の脇に置かれた。ところが翌朝、トラの死骸が忽然とすが
たを消していたのである。

村長が住民たちに事情聴取したにも関わらず、みんな口をそろえて「誰が持って行ったの
か分からない」と答えたそうだ。天然資源保存館担当員は呆れた顔で、「そんな馬鹿な話
があってたまるか。」とその報告に応じた。数人がかりでやっと運べるトラの死骸を誰も
気付かないようにこっそり盗めるわけがない。[ 続く ]