「ヌサンタラの渡り鳥(3)」(2021年03月26日)

2013年9月から12月ごろまで、東ジャワ州マラン地区バトゥBatuの西にあるバニャ
ッBanyak山の上をさまざまな種の鷲鷹の仲間が通過した。それは中国・モンゴル・チベッ
ト・ロシアからの渡り鳥だ。世界に数百種いる鷲鷹の中でインドネシアにいるのは42種
であり、そのうちの3種は渡り鳥として移動してくるときに、しばしばマラン地区を通過
する。

その3種とはハチクマPernis ptilorhynchus、ツミAccipiter gularis、アカハラダカで、
それぞれはインドネシア名をsikep madu asia、elang-alap nipon、elang-aiap chinaと
言う。かれらが南下してマラン上空を通過するのは10〜11月、そして北へ戻るために
ふたたびそこを通過するのは2〜3月だ。

2015年12月、海抜1,325メートルのバニャッ山上空を数羽のハチクマが悠然と
舞っていた。そこには一週間前から姿を見せるようになったそうだ。中国・韓国・日本に
棲息しているハチクマがマラン地区へやってくるのは例年10月ごろがピークになるのに、
今年の到来は遅かった。それはスマトラとカリマンタンの泥炭地火災が今年は大きかった
ためだろうというのがもっぱら言い交わされている推測だ。渡り鳥の季節に同じようなこ
とが毎年繰り返されると、何百年も続いてきた鳥の移動ルートに変化が起こることが懸念
されている。

やってきた渡り鳥と地元の鳥を見分けるのは飛翔高度で分かる。地元の鳥は比較的低い空
を飛ぶが、渡り鳥はずっと高い空を飛ぶ。渡り鳥がやってくると、時に地元の鳥とコンフ
リクトを起こす。鷲鷹類にとって獲物の争奪は避けて通れないことだろう。そのせいで、
飛翔高度を変えている可能性は十分に感じられる。

2000年には、インドネシアに渡って来た鷲鷹類が1万羽を超えたそうだ。2015年
のマラン地区上空で観察された鷲鷹類は百羽くらいだった。

アルジュナ・アンジャスマラ・スムルの山々一円にかけて棲息している地元の鳥にはカン
ムリワシSpilornis cheela(elang ular bido)、ジャワクマタカNisaetus bartelsi(elang 
jawa)、ハチクマなどがいる。人間の生活領域が広がるにつれて、渡り鳥にせよ地元種に
せよ餌の入手は困難を増しており、かれらは人間の飼っている家畜を襲うようになる。鷲
鷹の餌食になるのはニワトリだ。


南スマトラ州バニュアシン県スンビラン国立公園はスマトラ島東海岸部にあってバンカ海
峡に面し、州都パレンバンから高速艇で5時間の距離にある。エコシステムの大部分は湿
地で潟とマングローブ林に満ち、水鳥にとっては食料の宝庫だ。

そのスンビラン国立公園が2013年3月、世界で第108番目の渡り鳥中継地に公認さ
れた。インドネシアではパプアのワスルWasur国立公園に次いで二番目になる。

スンビラン国立公園は北半球高緯度地方から渡り鳥が往復する東アジア=オーストララシ
アフライウエーの中継地になっている。このフライウエーはロシア東部・アラスカ・東ア
ジア・東南アジア・オーストラリア・ニュージーランドというルートに位置する22カ国
を通過し、毎年およそ5百万羽の鳥が7百の中継地を縫って往復している。

しかしこのフライウエーの維持と保護を表明して国際会議に参加する国は2013年現在
やっと13カ国で、108の公認中継地はそれらの国が鳥のための自然保護を決意した場
所ということになる。インドネシア領土内でこのフライウエーに関わっている中継地は7
カ所だ。

そのフライウエーを通る多種類の鳥の内で33種の水鳥が絶滅危惧種であり、13種はほ
ぼ絶滅しかかっている。インドネシア自体には1,598種の鳥が棲息していて、そのう
ちの380種が水鳥である。[ 続く ]