「インドネシアのヤギたち(1)」(2021年08月27日)

中央統計庁公式データによれば、2020年の全国羊頭数は17,769,084で、西ジャワ州に
12,272,435頭いる。一方のヤギは19,096,381頭で、最多は中部ジャワ州4,060,681、次い
で東ジャワ3,624,229、ランプン1,480,353、西ジャワ1,353,798、他の諸州はどこも百万
頭に満たない。ヤギの場合は全国のおよそ半分がジャワ島に集中している。

ジャワ島で一般的なのは、農家が農耕の副業としてヤギを飼う形態だ。農耕の一環で野菜
を作れば、青物のくずができる。ヤギの飼料費用が大いに助かることになる。普通一般に、
農家は子ヤギを購入して飼育し、大きくなったのを売却する。一軒の農家が飼うのは1〜
4頭くらいであり、東・中・西ジャワにいる頭数の大部分は農家に散らばっているのであ
る。このジャワ島で飼育されているヤギの大半はジャワヤギkambing jawaあるいは豆ヤギ
kambing kacangと呼ばれている小型種だ。

農家の家畜飼育はたいていニワトリから始まる。卵が孵化すれば財産が増える。増えたニ
ワトリを売って子ヤギを買う。ヤギを大きくして売却すると、次は牛や水牛の子供を買い、
大きくして農耕作業の手伝いをさせ、年を取ったら売却する。そんな農民の蓄財サイクル
の中にヤギがいるのだ。ヤギの飼育は金も手間暇もそんなにかからず、子供が世話してい
る家庭も多い、と農民たちは言う。東ジャワ州にいるヤギの9割は農家の庭先で遊んでい
る者たちで、資本を投下して大きい飼育ビジネスを行っている業者は指を折って数えられ
るくらいだそうだ。

ヤギや羊は一度に2〜3頭が生まれ、しかも年齢の大小に関係なく買い手が簡単に付くた
め、繁殖も売買の回転も速い。問題は最終消費が小さいことで、通過儀礼の祝祭や宗教祭
事の日に需要が盛り上がっても、なかなか大量の日常消費は実現しない。


東ジャワ州シドアルジョ県の農家もヤギの飼育を盛んに行っている。ブドゥラン郡サウォ
ハン村では、各農家が個別に飼っていたヤギを一カ所に集めて飼育する方式に変えた。そ
れまではたいていヤギを各家が周囲に放し飼いにして自由にさせていたから、ヤギが台所
や屋内に入ったりするため、衛生上の問題を抱えていた。

村の外にある養魚池の堤防に近い場所の土地を地主から借りて、そこに内部を35に区切
った大きいヤギ小屋を建てた。地代は年間100万ルピアだから、ヤギ飼育農家は一区画
を借りるのに年間3万ルピアで済むのである。

村民のカマルさんはその日の朝、ひとりで共同ヤギ小屋にやってきた。まず小屋から10
メートルほど離れた水路へ行ってバケツで水を汲み、自分の区画の飲み水桶を満たした。

次に区画の中を掃除し、糞やごみを集めて燃やす。それが終わると、自分のヤギ65頭を
全員引き連れて、養魚池の向こう側にある草地に連れて行った。カマルさんの今日のヤギ
の世話はそれで終わりだ。ヤギたちはそれぞれが自由に動き回って草を食べ、日暮れにな
ると自分で小屋に帰って眠る。ヤギが草を求めて歩く一日の行動半径は8〜10キロくら
い。ヤギがせっせと自分の腹を満たしている間、カマルさんも自分のための稼ぎに精を出
せばよい。ヤギを飼っている村民はたいていひと月に1〜2頭のヤギを売り、子供の学費
と生活費にあてているそうだ。

ヤギの世話は健康状態を管理してやるのがメインになる。妊娠している者や病気にかかっ
た者に注意しなければならない。よく起こるのは、生きたバッタを食べたあとに腹が膨れ
て来る病気だ。他のリスクには、子ヤギが養魚池に落ちて溺れたり、野犬に襲われて咬ま
れたりする事件もある。[ 続く ]