「スラウェシ島の食(12)」(2021年09月22日)

リチャリチャは、だから料理の味付けに使われる調理素材なのであり、サンバルのダブダ
ブと混同してはいけない。更にミナハサ人はリチャをトウガラシの意味で使うが、リチャ
リチャの短縮形としても使うので、これもややこしいことになる。

ミナハサのリチャはジャワのトウガラシと違っていて、もっと細長い。そしてジャワのト
ウガラシも相当に辣い物があるが、リチャは格段に辣い。ミナハサ人は特別に辣いリチャ
をrica anjingと呼んでいる。食べた者をキャインキャインと鳴かせるからだそうだ。

そんなトウガラシ大好きマナド人はトウモロコシやピサンゴレンにまでトウガラシを使う。
あの甘いおやつのピサンゴレンを、サンバルを付けて食べるのである。このマナド風ピサ
ンゴレンはピサンチョロチョロpisang colo-coloと言う。サンバルにcocol-cocolするか
らだそうだ。

サンバルもsambal roaと呼ばれる特製のもので、ikan roa(英語のballyhoo)と赤トウガ
ラシを潰して作る。バナナは柔らかくて甘いpisang nangkaやpisang kepokなどでなく、
木から取られたpisang tandukの熟れていないものがすぐに調理される。バナナは皮をむ
いてから縦に割って扇型にする。それでサンバルロアをつついて食べるのである。だから
甘味がなくて旨味が感じられ、昼食前とか午後のハイティ―の軽食に供される。


他の軽食としてはカツオの身入りのパナダ、魚の身入りルンプルlemperを焼いたlalapa、
あるいはマナド風アシナンasinanあるいはルジャッrujakの異名をとるゴフgohu。

ゴフは潰した赤ショウガ・赤バワン・トウガラシ・酢そしてトラシterasiの一種であるバ
カサンbakasangを茹でてから冷まし、それに未熟パパヤを細長く切って浸けたもの。供さ
れる前に冷蔵庫で冷やしておくのが普通だ。

もちろんトウガラシ要らずの軽食だってある。ヤシ砂糖を中に詰めたモチ米の握りをパン
ダンの葉で包んだクエアブkue abu、別名コヤブkoyabu。あるいはポパチョpopaco。それ
とも揚げ物のクエチュチュルkue cucur Manado。いくら西洋文明化しても、コメを使った
甘いものがこの熱帯アジアの一画にないはずがないのである。


また、ウォクwokuというマナド特有の調理法もある。使われる容器によって大型土鍋を使
うwoku belangaと大きな葉で包むペペスpepesスタイルのwoku daunに区分される。ウォク
の語源は飯を包むのに使われたロンタルヤシの一種ウォカwokaの葉に由来しているそうで、
決して中国語ではない。

この調理法は肉や魚の料理に使われ、woku sapi, babi woku, ayam woku、あるいは水産
物のwoku ikan nila, ikan kerapu woku, ikan mas woku, kepiting woku, udang wokuな
ど多種に及んでいる。wokuの語が食材の前に置かれたり後ろに置かれたりしていてめまい
がしそうだが、そのような使い方がなされているから仕方ない。ただしマナドレストラン
で一般的なメニューはayam wokuとwoku cakalangになっている。

ウォクに使われるスパイス類はバジル・コブミカン葉・パンダン葉・ウコン・スレー・ワ
ケギ・トマト・チャベラウィッ・ショウガ・ニンニクで、すりつぶすものをまず作業し、
ウォクブラガの場合はそのまま使うスパイスと一緒に少量の油を入れた土鍋で炒める。そ
こに肉や魚の食材を入れて炒め、できあがったらウォカの葉に置いて包む。ウォクダウン
の場合は最初からウォカの葉に置いて包み、それを蒸したり焼いたりする。このウォクの
方がリチャリチャよりずっと辣いそうだから、見かけに目をくらまされてはいけない。
[ 続く ]