「ウシ ウシ ウシ(18)」(2021年09月30日)

インドネシア科学院LIPI専門家によれば、西ジャワではウジュンクロン国立公園、パ
ナンジュン自然保護区、ガルッ県ルウンサンチャンLeuweung Sancang自然保護区にバンテ
ンが生き残っているとの談だ。ルウンサンチャンでは1998年に2百頭が報告されたが、
2000年には10頭に減少し、2003年に絶滅したと発表された。だが、専門家は生
き延びている者がいると言う。水牛の唯一の捕食者だったジャワ豹が絶滅したにもかかわ
らず、バンテンが急激に減っているのは皮肉としか言いようがない、と専門家はコメント
した。激減の原因はバンテンのハビタットがひとつの大きなエリアから小さい多数のエリ
アに細分化されたためであり、総面積の縮小よりもっと実質的な狭隘化が起こったからだ。

広大な森林原野のあちこちに人間の集落が作られ、同じ生活エリア内での人間との共存を
嫌うバンテンが狭いハビタットに封じ込められたためにそんな結果に至った。バンテンは
人間に対してたいへんアグレッシブになる動物なのである。


西ジャワ州西端のウジュンクロン国立公園では、また状況が違っている。7万6千Haとい
う広大な大自然の中で、バンテンは威勢を振るい、わが世の春を謳歌しているのだ。19
72年には2百頭ほどしかいなかったバンテンが、1999年には8百頭近くまで増加し
た。ところが、国立公園運営者にとってそれは、少しもめでたい話にならないのである。
なぜなら、この国立公園の目玉がジャワサイであるためだ。

ジャワサイもバンテンも、だいたい似たような植物を餌にしている。バンテンが少ない時
代はサイも食べ物に困らなかった。ところがいまや、その両者の間で食べ物の奪い合いと
いう状況になってしまった。頭数ではるかにまさるバンテンがみんな腹いっぱい食べたな
ら、マイノリティのサイは空腹を抱えることになる。バンテンはジャワ島の他の場所にま
だいるものの、サイは全ジャワ島でここにしかいない。ウジュンクロン国立公園管理館は
バンテンの一部を他の場所に移して頭数調整を行う方針を立てている。


ジャワ島東部最南端のバニュワギ県アラスプルウォAlas Purwo国立公園にもバンテンはい
る。そこにはかつて80から100頭が棲息していると言われていたが、2004年4月
に行われた調査では、公園内のサバンナ草原で57頭が数えられた。人間による狩猟がこ
の国立公園内におけるバンテンの減少に一役買っているものと見られている。

乾季になって公園内の自然水が干上がると公園の外に水を求めて出て来るバンテンを狙っ
て、密猟者は罠を仕掛ける。密猟者は罠にかかったバンテンを屠って、その肉を食肉とし
て販売するのである。


反対にジャワ島東端の北側にも総面積2万5千Haの国立公園があって、バンテンが棲息し
ている。ジャワ島とバリ島を結ぶフェリー港クタパンKetapangがそれら南北の国立公園の
間にある。多分昔は、ジャワ島東端地方はバンテンで満ち満ちていたのだろうが、いまで
は南北の端に追いやられてしまった印象だ。

この北側のバルランBaluran国立公園には大草原があってアフリカのサバンナに雰囲気が
似ているため「ジャワのアフリカ」の異名を取っている。野牛の棲息地としてはもってこ
いの自然環境だ。1992年にはこの地に338頭のバンテンが棲息していた。それが2
006年には15頭まで減少し、2012年に26頭まで回復した。[ 続く ]