「ジャワ島の料理(6)」(2021年11月11日)

グドゥッの標準盛り付けは、ブンブを加えた濃いココナツミルクのarehをかけた白飯に、
ゴリ、アヤムカンプン、鶏卵またはアヒルの卵、テンペまたはタフバチュムbacem、サン
バルゴレンクレチェッsambal goreng krecekを添えて一つの皿に載せたものだ。

バチュムはテンペやタフを日持ちさせるために行う調理法で、赤バワン・ニンニク・コリ
アンダー・ククイ・塩を合わせてすりつぶし、それをタフやテンペと混ぜてからたっぷり
の水で煮たもの。ヨグヤのひとびとはそれを甘くしたものを好むので、たいていヤシ砂糖
が混ぜられている。

クレチェッは乾燥させた牛の皮のことであり、皮クルプッkerupuk kulitの素材だ。通常
のサンバルゴレンに揚げた牛の皮を混ぜたものがこのサンバルである。


グドゥッは今や、ヌサンタラで知らないひとの方が珍しいジャワ料理になっている。コン
パス紙R&Dが2013年4月22〜23日に行った、全国11大都市住民302人を対
象にするアンケート調査で、好きなヨグヤ・ソロの食べ物について6割の回答者がグドゥ
ッを選んだ。

質問1:ヨグヤ・ソロの料理で好きなものは?
回答1:
ナンカだけの標準グドゥッ 59.3%
クレチェッ 7.6%
ナシリウェッ 5.1%
ソト 3.3%
グダガン・ウラップ 2.9%
バミジャワ 2.5%
(gudangan/urapというのは、バンウコン・ニンニク・トウガラシ・コブミカン葉・ヤシ
砂糖・塩とすりおろしたヤシの果肉を混ぜて、茹でた野菜類に混ぜたもの。
bakmi jawaは汁麺の汁がジャワ料理特有のブンブで作られているもので、たいてい鶏肉を
むしったものとアヒルの卵が入っている。)

質問2:ヨグヤ・ソロの料理が気に入った理由は?
回答2:
味が好みに合う 57.9%
自分の出身地の料理だから 16.0%
その土地に住んだことがあるから 11.2%


このグドゥッも誕生説話を持っている。その昔、勃興して来たマタラム王国が初代の王パ
ヌンバハン・セノパティの指揮下に王国建設を開始した。王宮建設の場所がMentaokの森
と定められ、森を切り開くために大勢の兵士が動員されて斧を振るった。ムンタオッの森
にはナンカの樹がたくさん生えていた。

あるとき、兵士たちへの食事の支給に不手際があったのだろう。おかずの不足が起こった
ようだ。そのために手近に入手できるものでおかずを作れという命令が出された。

ゴリを穫ってココナツミルクで煮ようと考えた兵士がそれを用意して火にかけたものの、
それが煮えるのを待つ時間も惜しんでまた斧をふるい始めた。かれが料理を忘れてしまっ
たのか、それとも伐採作業の手が離せなくなったのかよくわからないが、ともかく8時間
ものあいだ、火の上の料理は沸騰し続けた。それがグドゥッの由来だそうだ。

グドゥッの語源として、ジャワ島イギリス占領時代にイギリス人がこの料理を食べてコメ
ントした言葉に由来しているという説がある。「Good, Dek!」がその言葉であり、Dekは
インドネシア語のDik(adikの呼びかけ表現)と説明されている。インドネシア語のadik
はジャワ語のadhekであり、省略されてdhekになる。発音は強母音のデッが使われていて、
弱母音で発音するひとに出会ったことがない。だから、この説は言語が持っている音の面
への配慮が貧困であるように感じられてならない。[ 続く ]