「女性の長寿はナンデか(前)」(2022年02月04日)

12月22日の母の日の祭典が終わったばかりだ。インドネシアのみならず世界中のどの
国でも、母たちは父たちよりも長い人生を享受している。福祉の向上や保健衛生の改善も、
その関係を変えることができない。性別が人間の寿命を決めているのだ。2013年にW
HOはインドネシア人の平均余命を、女性73歳男性69歳と発表した。1990年デー
タに比較して、インドネシア人の寿命は9年伸びた。

女性が男性より長寿であるという実態は貧困国でも富裕国でも、程度の差こそあれ、違い
がない。平均余命46歳という世界でもっとも短命なシエラレオネの男女差は1年未満だ。
84歳という最長寿国の日本では、女性が87歳男性80歳となっている。女性が男性よ
りも長生きできるのは、ナンデか?

第一の推測は、人類の進化プロセスが男性を家庭外で働らく者、女性を家庭内で働らく者
にしたからという理論だ。家庭外労働における消費エネルギー負担・環境の重圧・克服す
べきリスクへの対応などが老齢に入った男性の肉体に長寿のための原資を残さなかった。
しかし現代人は男性も女性も似たような労働環境の中で同じ程度のエネルギーを消費して
いるにもかかわらず、寿命に関する両者の差は縮まっていない。

この理論に関しては、スエーデンの例がひとつのヒントをもたらすだろう。産業革命が始
まったころの1800年ごろ、スエーデンで女性の平均余命は33歳、男性は31歳だっ
た。今、女性は83.5歳、男性は79.5歳になっている。2百年という歳月がどれほ
ど寿命の差を変化させただろうか?平常な出生と死亡を前提にするなら、年齢に関する女
性の優位はあらゆる国で人生のすべてのフェーズにわたって一貫している。2015年1
0月2日のBBC論説にデイヴィッド・ロブソンはそう書いた。

別の仮説は、男性のライフスタイルが男性の寿命を削っているというものだ。男性は女性
よりも食事の量が多く、アルコールを飲み、タバコを吸う。そのせいで、ロシアの男性は
女性よりも12〜13年早死にしているそうだ。ところが、チンパンジー・ゴリラ・オラ
ンウタン・オワなどの類人猿はどの種も、メスのほうがオスより長寿なのである。かれら
はアルコールも飲まなければ、タバコも吸わない。

これはどう見ても、ずっと基本的な部分にその現象の原因があるのではあるまいか。英国
ニューカッスル大学教授は、ライフスタイルや社会状況が人間の寿命に影響を及ぼすのは
確かなことであるが、人間の生物学的な部分に本質的な要因がある、と語っている。

< 染色体 >
寿命の差という違いを生み出しているメカニズムのひとつが染色体である。細胞のひとつ
ひとつが持っているDNAの複合体だ。女性はX染色体を二つ持っており、男性はX染色
体とY染色体がひとつずつになっている。

X染色体がふたつあることで女性は染色体のスペアを持つことになり、遺伝子が壊れても
元々の働きはカバーされる。男性にはそのスペア機能がないから、加齢によって遺伝子に
破壊が起こると、もう後がない。病気にかかりやすくなるのである。[ 続く ]