「ジャワ島の料理(76)」(2022年02月25日)

ハジマタリが作るサユルアサムには長豆・ナス・トウモロコシ・ムリンジョの実・ムリン
ジョの葉・ピーナツなどが入っている。別のワルンでは、もっと実だくさんにして13種
類もの野菜類を使っているところもある。ナンカ・パレ・クルウィ・クチピル。ピーナツ
も皮付きと皮なし、更にボゴール豆までが加わる。たいていブタウィのカンプンに自生し
ているものが使われている。

ブンブにもオンチョムとジェンコルが加えられる。ジェンコルは一週間、土の中に埋めて
から使われる。臭いと酸味を消すためだ。

ハジマタリのワルンでは、野菜類は熱で萎れた状態にしないように気を配っているから、
一般的なサユルアサムとは食感が違っている。タマリンドの実も熟れ切っていないものに
熱湯をかけてから他のブンブに混ぜている。結局は、料理人の腕がブタウィ風サユルアサ
ムをさまざまなものにしているということだろう。


sopと名付けられたブタウィの汁料理にはsop kaki kambing, sop kambing, sop betawiな
どがある。ソトブタウィは既に上で見て来たが、このソップブタウィとはいったい何なの
か?

コンパス紙サイトの記事によれば、ソトブタウィもソップブタウィも肉の細切れと野菜類
にブイヨンとブンブの汁がかけられるものであるが、ソトはココナツミルクが使われ、ソ
ップはそれを使わない透明な汁になっている、と説明されている。言うまでもなくこの弁
別はソトブタウィがココナツミルクを使うために可能なのであり、ココナツミルクを使わ
ない地方のソトには適用できない。


ソップカンビンブタウィはヤギ肉と臓物を煮てブイヨンを取り、それにブンブを混ぜて汁
にしたものだ。そのままだと透明の汁であり、それに牛乳が混ぜられて白くなったものも
ある。

ソップカンビンとソップカキカンビンの違いは、ブイヨンを取るのに脚の骨・筋・脂肪な
どを使うか、それとも肉と臓物だけを使うかの違いであるようだ。ところが今ではヤギの
頭を使ってブイヨンを取る方法もよく行われており、それがソップカキカンビンと呼ばれ
る料理になるのには驚く。

ヤギの頭からは舌・頬・耳・目・脳などのバチュムが採れる。それでブイヨンを取ったり、
そのあとでバチュマンにしたりできる。ジャカルタ住民の多くも、この種のバチュマンを
好んでいるとソップカキカンビンのワルン店主は語っている。


ジャカルタのソップカキカンビンのメッカはタナアバン地区だ。特にマスマンシュル通り
〜カレッ墓地周辺にワルンが多い。タナアバンにヤギの印象がたいへん強いのは、ユステ
ィヌス・フィンクが1735年にパサルタナアバンを開いてからそこでヤギの商いが盛ん
になったためで、イドゥルアドハの祭りのためのカンビンを買うひとびとはたいていパサ
ルタナアバンを目指した。

イドゥルアドハの時期でないときは、一頭まるごとでなくて肉や特定の臓物を買う客の方
が多かったのではないだろうか。必然的に売り物のヤギを屠る仕事が起こったにちがいな
い。ソップカキカンビンワルン店主のひとりは、先祖代々からの同業者はたいてい、パサ
ルタナアバンでヤギの売買をしていたか、あるいはヤギの解体作業をしていた者の子孫だ
と述べている。


最初、ソップカキカンビンの作り売り商売がタナアバンの住宅地区のあちこちに出現し始
めた。Gang Mess, Gang Awaluddin IとII, Gang Kuburなどが中心地を成した。最初はガ
ンメスに始まって、タナアバン一帯に広がり、更にガンビルGambirやメンテンMenteng地
区にまで広がった。そして行政による公共秩序保全のための強制立退きで追い散らされて、
嵐が収まったころにタナアバン地区に戻って来た。[ 続く ]