「ナシチャンプル(2)」(2022年03月31日)

話はそれるが、日本文化の精髄であるおにぎりは日本にしかないというような表現を目に
することがある。世界をよく知らないとそんなことになるのかもしれない。中部ジャワに
はnasi golongという球状に成形した飯が古来からの伝統食品として存在している。昔の
日本人はおにぎりに梅干しを突っ込んで食べていたのに比べて、ナシゴロンは儀式のため
の様式であり、飯球の周囲におかずが置かれたナシチャンプル形式で供されている。

本稿では、皿に盛られた飯とおかずという様式を条件にして、ヌサンタラにおけるナシチ
ャンプルのバリエーションを集めてみた。

[Nasi Rames]
ラムスはジャワ語でチャンプルの意味であり、ジャワ人はナシをジャワ語のsegaに替えて、
スゴラムスと呼んでいる。ラムスは既にインドネシア語に認定されているため、ナシラム
スとナシチャンプルはインドネシア語で同義語になっている。
このラムスという言葉は、ジャワ語のチャンプルに由来しているのではないという説もあ
る。それによれば、oRA MEStiから取られたものであって、標準など存在しないことを述
べていると言うのだ。飯は味付きであってもなくてもよく、おかずも何の肉でもどんな野
菜でも、本人が食べたいものを皿に盛ればよいだけで、そういうセットになったものがナ
シラムスなのだそうだ。

[Nasi Timbel]
スンダ語のティンブルとはバナナ葉でくるんで筒状にした飯のことだ。それにおかずが添
えられたナシチャンプル状態のものがナシティンブル(スンダ語はsangu timbel)という
ことらしい。つまりティンブルを使うナシチャンプルがナシティンブルという定義になる
のだろう。しかしティンブル状の飯のことをナシティンブルと呼んでいるインドネシア人
はいないだろうか?この種の混同混乱は世界中にあるものだから、書生っぽい議論は野暮
と言うものかもしれない。
ナシティンブルは西ジャワ州とバンテン州で一般的な食事形式であり、弁当としてどこか
へ持って行くこともよくなされる。

[Nasi Bogana/Begana]
ナシボガナ(またはナシブガナ)は中部ジャワ州トゥガルTegalやブルブスBrebesの郷土
料理である。しかし西ジャワ州のチルボンでは、飯を円錐形にして周囲におかずを配置す
るナシトゥンプンの形式になったナシボガナもある。チルボン王宮ではナシボガナが聖な
る食事とされており、王宮の催事に欠かせないものになっている。

[Nasi Jamblang]
チルボンのジャンブラン村に生まれた特徴的な飯。地元ではジャワ語でスゴジャンブラン
と呼ばれている。チークの葉で包んだ飯の塊の周囲にサンバルゴレン・タフ/テンペゴレ
ン・塩魚・豆腐と野菜の煮物・ナンキョウ煮の肉・牛肺料理などのおかずが配されたもの。
飯の塊は小さめなので、葉に包まれた状態で皿に置かれる場合は複数になる。もちろん、
葉無しで皿に盛るのも自由だ。
おかずのひとつに、イカ墨と一緒に煮込んで真っ黒な濃い汁に浸っているイカ料理バラク
タッヒドゥンがあり、それをナシジャンブランのシンボルにしているひともいる。
[ 続く ]