「日本竹」(2022年04月18日)

ライター: 文学者、F ラハルディ
ソース: 2014年7月12日付けコンパス紙 "Bambu Jepang"

集合オフィス地区の庭に植えられている観賞用の竹を指さしながらそこに居合わせたひと
りが、さる有名大学を卒業した女性造園設計者に尋ねた。「あの竹は何という竹?」
回答者は即座に答えた。「あれはbambu jepang(日本竹)です。」
質問が続いた。「じゃあ、日本が原産地なの?」
回答者はちょっと考えてから返答した。「ええ、そうに決まってますよ。日本のものじゃ
ないのに、日本っていう名前を付けるわけがないでしょう。」

本当は、その竹は日本の原産でなくてタイのものだったのだ。正式名称もbambu jepangで
なくてbambu biara、別名Monastery bamboo、学名Thyrsostachys siamensis。タイ原産の
竹がどうしてインドネシアで日本竹になったのだろうか?


ある地名の付いた名称の商品がその土地の原産でないということの実例はわれわれの周囲
に限りなく存在する。itik manilaやsawo manilaはフィリピンのマニラが原産なのでなく、
スペイン人が南米からそれらをフィリピンに持ち込んだのだ。duku palembangの原産地は
南スマトラ州パレンバンでなくてジャンビだ。asam selongの出自はセイロンでなくて南
米のブラジルなのである。

itikやsawoはスペイン人が南米からマニラを首都にするフィリピンに持ち込み、インドネ
シアへはフィリピンから入ってきたために、itik manilaやsawo manilaと呼ばれた。ジャ
ンビ州に産するdukuはたいていパレンバン商人がジャカルタに持ち込んで販売したからそ
う呼ばれた。dewadaru/siantoの実がどうしてasam selongと呼ばれるようになったのか、
bambu biaraがどうしてbambu jepangに変化したのか、等についてはよく分からない。


そのような類の誤識による命名ははるかに大きなスケールで発生し、しかも今日まで継続
している。話によれば、古代エジプト時代にヌサンタラの島々はスパイスの産地として中
東地域に知られていた。中でもクローブがスパイスの焦点を成した。抗菌性を持つクロー
ブの花はマルクの四島にだけ生えていた。この重要商品は料理のスパイスや医薬品として
使われた他に、ファラオたちのミイラを作るためにも必要とされた。そのクローブは最初
ジャワの商人たちがマルクの島々から国際通商ルートに運んだ。

ジャワに運ばれたクローブをインド商人がインドに運び、インドまでやって来たアラブ商
人がそれを買い付けて中東に運んだ。中東ではそのクローブがインドの島々の産品だと言
われた。ヌサンタラでは、クローブの他にもスマトラのシナモン、ジャワトウガラシやク
ムクス、安息香、沈香、白檀などを産した。ヨーロッパで諸王国が栄え始めたとき、クロ
ーブは秋に屠られた牛肉や羊肉が年を越すための保存資材になった。冷蔵庫や冷凍庫のま
だなかった時代なのだ。


三世紀に渡って続けられた十字軍戦争の中にスパイスロード争奪という目的が小さくない
要因を成していたことは否定できない。ヨーロッパにとってかけがえのないクローブが最
大のターゲットだったのである。万金に値するクローブを手に入れようとして、その産地
であるインドの島々へ向かう海路をヨーロッパ人は探し始めた。地球が球体であると信じ
るコロンブスはインドの島々へ行くために西へ向かって航海し、中米のカリブの島々を発
見したのである。

コロンブスとヨーロッパ中のあらゆるひとびとが、重要スパイス商品を産するインドの島
々を見つけたと思った。ひとびとはそこを西インドと呼んだ。そしてまた、その地の先住
民と更にその向こうの大陸に住む人間をインド人Indianと呼んだ。それは現在もそのまま
に使われている。


そのような誤識の例はたくさんある。七面鳥は野生のものも飼育されたものもアメリカ大
陸が原産だ。ところが米国ではそれをターキーturkeyと呼んでいる。ではトルコ人はどう
呼んでいるか?トルコ語で七面鳥はhindi(インドのもの)だ。

インドネシアで、西ジャワ地方の雑草の中にdaun walangと呼ばれるものがある。臭いが
walang sangit(日本語はカメムシ)に似ているからだ。ジャワ人はそれをtumbar londo、
オランダのketumbar(コリアンダー)と名付けた。オランダ人はそのお返しをして、それ
をjava korianderと呼んだ。実際のところ、その植物はメキシコが原産地なのだ。ところ
が誤った原産地を示す学名がいまだに使われている。

超辣いhabaneroトウガラシにCapsicum chinenseという学名が与えられた。中国が原産地
と考えられたようだ。南米以外にトウガラシの原産地はないというのに。