「爪を研ぐ人間(前)」(2022年04月19日) ライター: 随筆家、ヤコブ・スマルジョ ソース: 2007年12月1日付けコンパス紙 "Kuku Manusia" 人間にはなんで爪があるのか?人間が持っている爪は何の役に立つのか?人間の爪と動物 の爪の違いは何なのか?人間の爪には意義があるのだろうか。 親がしばしば返答に窮する子供っぽい質問がそれだ。しかし子供たちは往々にして、親が 答えに困るような質問を出してくる。子供たちの質問は哲学的な質問だ。パパ、ママはな んで泣いてるの?鳥はなんで飛べるの?ママのお腹に入った赤ちゃんはどこから来たの? なんで? 存在の理由に関するさまざまな質問なのだ。親はたいてい、大体こうだ、という返答をす る。ママのお腹にいるお前の弟は鳥が運んで来たんだ。その子の年齢が上がっていったあ と、昔聞いた答えは新たな疑問を招く。その鳥はいったい誰の鳥? < 人間の爪 > どうして人間には、トラやクマや鳥のような爪があるのか。人間の爪はどうして水牛や馬 や象やヤギのような爪ではないのか。馬・羊・鹿などの奇蹄類の動物を見てみるなら、そ れらはすべからく餌食になる動物になっている。この種の動物が持っている特徴的な傾向 として、他の動物を殺さないことが挙げられる。ましてや同種の仲間を殺すことさえしな いのだ。かれらは草食性動物なのである。 ところが人間・トラ・クマなどは爪を使って引っ掻き、他の動物に傷を負わせる。かれら の爪は他の動物を殺すための道具なのだ。それが他の動物を食べて生きている肉食動物の 特徴だ。ケダモノとしての人間もそうなのである。鳥の中にさえ、爪を使って他の動物を 捕え、食べる者がいるではないか。 もし人間がトラやクマやワシのような動物であれば、その本性はトラやクマと同じで、両 手両足を使って他者を引っ掻くのを好む。いやそれは違うと言うのなら、人間の爪はどう して水牛のような奇蹄類の爪のようになっていないのか? 奇蹄類の動物の爪は、自己防衛のためにだけ使われる。馬は痛めつけられると相手を蹴る。 奇蹄類の動物は肉食動物でなく、捕食される側の生き物だ。 人間もトラも攻撃的な生き物だ。人間の爪が持っている攻撃性は、老妻と若妻が引っ掻き あって血だらけになる場面で見ることができる。つまり人間の爪は本能的な攻撃ツールな のである。 一般的に人間は、肉食動物に属しているということを隠すために、3〜4日ごとに爪を切 っている。爪切り行動は、人間が本当は殺しの動物であるという本性を隠すために行われ るものだ。複数の爪を持つ人間は本当に殺しの動物なのだろうか。 < ことわざ > 人間はトラのようなものだという意識は、ムラユ人の祖先たちの頭の中に存在していた。 爪kukuを主題に取り上げたことわざがいくつもある。 ・belum berkuku hendak mencubit まだ爪もないのに抓ろうとする まだ権力もないのに、あたかも権力を持っているかのように振舞う。爪がまだしっかりと 生えそろっていないのだから、抓ろうが引っ掻こうが、相手はダメージを受けない。 ・diberi berkuku hendak mencengkam 爪をもらったら掴みかかろうとする これこそ、人間が他の人間に対する肉食動物であるという本性を証明する描写だ。権力が 強く鋭くなるにつれて、爪の威力は鋭く深くなる。このことわざは爪を研いでいるインド ネシアの階層に対し、権力の爪を安易に使わないようにいましめているのだ。[ 続く ]