「トロトアル」(2022年04月22日)

ライター: イ_ア大学文化学部名誉教授、ベニー M フッ
ソース: 2008年5月2日付けコンパス紙 "Trotoar"

われわれは毎日、トロトアルという言葉を口にする。フランス語trottoirがその語源で、
先にオランダ語の中に摂りこまれ、それがインドネシアにもたらされてインドネシア語に
なった。「歩行者のために専用に設けられる、ある幅と高さを持った、道路の端の部分」
というのがその語義だ。フランス語のこの言葉は動詞trotterに由来していて、トロテは
馬が小走りに走る意味である。フランスでは最初、馬は広い道路の端を歩いていたために
trottoirはその場所を示す言葉であった。時代が下って、道路の端が歩行者のためのもの
になったので、語義が変化した。英語で対応する語はイギリスでpavement、アメリカで
sidewalkだ。

インドネシアでトロトアルの意味はフランス語トロトワルや英語ペイヴメントあるいはサ
イドウォークと同様の「歩行者のための専用の道」だ。道路交通法の中で「自動車が通る
道路には歩行者専用の道が設けられなければならない」という規定が既につくられたのか
どうかをわたしは知らないが、現実には、自動車が通行するために作られた街中のすべて
の道路に歩道があるわけではない。その結果、場所によっては歩行者も自動車が通るスペ
ースを通行することになり、四輪や二輪の自動車が歩行者に接触したニュースが当たり前
のように報道される。

地方自治体は横断歩道や歩道橋のように道路端の歩道を用意した。ところが、その歩行者
専用道路をしばしば(ますます盛んに)二輪車が通行するのである。だから歩行者が自分
のための場所を歩いていて、二輪車に接触されたりぶつけられたりすることが起こる。


それどころかもっとひどいことに、トロトアルという名のスペースを占拠する商人が増え
ているのだ。かれらは最初、その場所で商品を陳列するだけだが、そのうちに半恒久的な
テントを張る。その後テントに替えて半恒久的な建物を作り、行き着く果ては恒久的な建
物が歩道の上にできあがる。役所の不良役人は歩行者よりも商人に関心を持つ。商人から
は闇の税金が徴収できるが、歩行者から金を取ることはできないのだから。こうして歩行
者は自分のために作られた道から追い払われることになる。

商人のためのスペースになった歩道はkaki limaという名前に変わる。カキリマという名
称の由来は諸説あってよくわからないが、わたしにとってそれは重要なことではない。ト
ロトアルという名称が、道路から用地に機能が変化するのにともなって消滅してしまうの
が問題なのである。用地に変化した歩道の上で商売している商人たちは、pedagang kaki 
limaという名称を与えられているものの、わたしの目から見るならかれらは歩行者のため
に作られた歩道を不法占拠しているpenyerobot trotoarなのである。この不法占拠者たち
が金を媒介にして不良役人に祝福されていることがガンになっている。

地方自治体が法規の厳正な執行の意志を示さないかぎり、その状態が改善されることはな
いだろう。不法占拠者を追い払うだけではダメなのである。不法占拠者を金の生る木にし
て育てている不良役人も一掃しなければ根本解決にならないのだ。それを行わなければ、
トロトアルはますますカキリマに用途転換されていく。われわれが望んでいるのは、イン
ドネシアの町がすべて住民にとって暮らしやすい場所になることなのだ。歩行者をいつま
でも下層賤民にしておいてはいけない。これは市長・県令・州知事など地方自治体高官職
者にとってのチャレンジなのである。可能だろうか?ワラフアラム!