「ヌサンタラのインド人(1)」(2022年04月25日)

日本人がインドと呼んでいるあの国の名称をそんな発音で呼んでいる国は世界にほとんど
ない。韓国人がそう発音しているのは、原因が中国にあるのか、それとも日本なのだろう
か?

世界中のたいていの国はIndiaあるいは語尾に母音のないIndやHind、またはHindustanな
どの言葉で呼んでいるようだ。だから、インドとインドネシアは紛らわしくて違いが分か
らない、などと言うのは日本人とせいぜい韓国人くらいだろう。IndiaとIndonesiaが紛ら
わしいなどと言う英語話者は果たして存在するのだろうか?


日本人がインドと呼んでいるのは、中国語の印度を摂取したからだ。唐時代の仏僧である
玄奘三蔵が身毒(シンドゥオッ)、賢豆(ヘンドウ)、などの表記に替えて印度(インド
ゥオ)を提案したことで、その文字表記と発音が中国に定着した。

中国語「印度」の中古音はYinduoで日本語インドとよく似ている。語源はペルシャ語のシ
ンドゥスあるいはヒンドゥスであり、ペルシャ文化地域とインド文化地域の境界を成す大
河インダス河を指してインド人が呼んでいたSindhuから取られたという説が語られている。
シンドゥはサンスクリット語で河を意味する。

つまりIndus河は元々インド人が名付けたシンドゥという名称をペルシャ人がシンドゥス
あるいはヒンドゥスと呼び、Sindus/Hindusがヨーロッパ世界に伝えられてIndusに変化し、
インドゥスと発音する国もあれば英語のようにインダスと発音する国も出た。日本人は何
が何でも英語を取り込んだから、その河の名称をインダスとしてしまったというのが、イ
ンド人が呼ぶシンドゥ河の極東に流れ着いた結末だろう。


日本語では、国名はインド、インド古来の宗教はヒンドゥ(教)、現代インドの公用語は
ヒンディ(語)、インドの語源になった大河をインダス河と呼んでいる。それらの間に一
貫した関連性は感じられるだろうか?
インド - ヒンドゥ教 - ヒンディ語 - インダス河

現代中国語(北京語)で印度はYinduと発音される。ヒンドゥ(教)は印度Yindu教、ヒン
ディ(語)は印地Yindi語、インダス河は印度Yindu河と書かれてそのように発音され、十
分な関連性を感じさせてくれる。
印度Yindu - 印度Yindu教 - 印地Yindi語 - 印度Yindu河

インドネシアの国名短縮形(未公認)と日本語の印度Indoが同じだから紛らわしいとコメ
ントしたインドネシア人がおり、日本人自身の中にも上述のように紛らわしさを訴えるひ
とが少なくない。中国語発音Yinduに変えれば紛らわしさは大きく減少するように思える
ので、これから日本人はインドと言わずにインドゥと発音すればそのような問題の解決に
貢献するかもしれない。紛らわしさにお困りの方はインドをやめてインドゥと発音しては
いかがでしょうか。

ただしその場合、インドネシアを中国語式で発音してはいけない。正式国名のIndonesia
を中国語では印度尼西亜Yindunixiyaと発音していて、原音のインドがインドゥにされて
おり、中国語の方に歪みがある。日本人のインドネシアの発音はそのままで良いのであり、
インドの発音だけをインドゥに変えてはどうかというのが上の提案だ。

ところで、中国人の中にもやはりインドゥとインドゥニシヤが紛らわしいと言うひとがい
るのだろうか?[ 続く ]