「ソトの世界(終)」(2022年04月27日)

*[tauto Pekalongan]*
プカロガンのソトはタウトと呼ばれる。トゥガルのタオチョ豆醤入りソトがsautoと呼ば
れている一方で、プカロガンのタオチョ入りソトがtautoと一字違いになっているのはど
うしたことだろうか。

インドネシア語ウィキを読むと、プカロガンのタウトはその昔スマラン華人の間で流行し
たcaudoに由来していると書かれていて、デニス・ロンバールの草肚起源説を思い出させ
てくれる。チャウドとは草肚のことだ。インドネシア語ウィキはこのチャウドがソトとい
う料理の起源であり且つ語源だとしている。プカロガンのタウト、マカッサルのチョトが
チャウドのホモフォンとして定着する一方で、他のジャワ人はそれをソトという名称にし
たという説明がウィキの中に見出される。

元々プチナン料理だったものをプリブミが見倣い、自分たちの味覚と食習慣に合うように
変化させた結果、全国各地に種々のバリエーションを持つソトという国民料理が形成され
たというのがその主旨だ。

プカロガンのタウトも本来は牛を使わないで水牛を使っていたそうだ。しかし水牛でなけ
ればタウトではない、と言うひとはいないようで、牛肉を使うタウトレシピもたくさん出
回っている。いずれにせよ、肉に白麺または春雨と野菜を合わせ、ダシ汁をかけて供する
ものであり、ダシ汁にはタオチョが加えられたブンブが使われてプカロガンのタウトを特
徴付けている。

*[soto Semarang]*
黄色い透明なダシ汁のソトアヤム。年経たアヤムカンプンでブイヨンを作る。ブンブはニ
ンニク・ククイ・ウコン・コショウ・ショウガ・塩を炒めて練り、ブイヨンに溶かす。具
は裂いた鶏肉と春雨・モヤシ・セロリなどだが、プルクデルや茹で卵を載せることもある。
上述のソトバンコンがソトスマランの代名詞になっている。

*[soto Sulung]
牛肉と臓物のソト。スラバヤのスルン通りのワルンが評判を呼んでソトスルンの名前が定
着した。臭みを抜くために肉と臓物にスレーとサラム葉を混ぜて煮る。そのあと、油で炒
めておく。ブイヨンには赤バワン・ニンニク・ウコン・ショウガ・ククイ・白コショウ・
塩のブンブを加える。トマト角切り・茹で卵半割・バワンゴレン・ネギ葉・セロリ細切り
を肉と臓物に合わせて椀に置き、ブイヨンをかける。トウガラシ・ライムを添える。

*[soto Tegal]
トゥガル特産のソトにはタオチョ(豆醤)が使われる。タオチョtaocoとは味噌のことだ。
トゥガルやブルブスBrebesのソトタオチョはサウトsautoとも呼ばれていて、こうなると
どうやら、sauto/saotoというのはソトの別名ではなくてソトタウチョを意味しているよ
うに思われ、上で見た焼肚がソトの語源という話から論理がますます遠ざかって行くよう
な気になるのだが、同感なさる方はいらっしゃるだろうか。

たいていのワルンでは、サウトはアヤム・サピ・臓物の三種類が注文できる。それにタオ
チョが加えられるために、味は甘味・辣味に味噌の酸味が混じる。具は鶏肉か牛肉、臓物
の場合は牛肉と牛の臓物、時には牛の軟骨も入る。それに野菜・ビーフン、そして揚げ物
も混じり、白飯またはロントンと一緒に食べる。

サウトの汁は普通のソトと同じような透明で茶色っぽいものだ。その椀に具が山のように
入っている。トゥガルのワルンサウトでは、客の中に味噌を好まないひとがいるため、味
噌なしのソトももちろん作ってくれる。

トゥガルのアルナルンの一角に店を出しているサウトの老舗、モロトレスノの店主は、ソ
トタウチョがいつごろから作られるようになったのかは皆目分からない、と言う。トゥガ
ル人はタオチョが好きで、カンクン炒めにまでタオチョを入れる。だからモロトレスノで
はテーブルにタオチョが置かれていて、客は好きなだけタオチョを自分の皿に取ることが
できる。

具の鶏肉や牛肉と臓物は先に調理してあり、それに一度熱湯をかけたモヤシやネギ葉など
を合わせてからソト汁をかける。使っているタオチョはプマランの生産者から購入してい
るそうだ。モロトレスノは毎日午前9時から23時まで営業している。平常月は一日も休
まない。ラマダン月に限って、前半の15日間は店を閉め、後半の15日間は17時から
24時まで営業している。[ 完 ]