「ヌサンタラのお粥(10)」(2022年06月15日) [Bubur Mengguh] ご当地名の付かない塩味系米粥は、まだまだたくさん残されている。ブブルムングッもそ のひとつだ。これはバリ島ブレレン地方の郷土料理だそうで、ブレレン県テジャクラ村が 発祥と言われている。鶏肉が使われるためにブブルアヤム系統のひとつと見ることもでき るだろう。バリ人はムングッをmangguhやmungguhとも発音するので、バリ島でこのブブル を試食してみようと思うひとは、発音の混乱に当惑してはならない。 ブブルムングッの作り方は、まずブンブ類を炒めた中に鶏の胸肉を入れて加熱し、火とブ ンブが十分に通った肉を鍋から取り出して別にする。次に米を軟らかくなるまで煮てから ココナツミルクと塩とサラム葉を入れて熱し、米粥を作る。粥に長豆やネギ葉などを混ぜ 込むひともあれば、プレーンの粥にして肉野菜類すべてをトッピングにするひともいる。 肉とブンブ類を炒めた汁は皿の粥に注がれる。ピーナツやチリメン雑魚がトッピングに足 されることもある。 [Bubur Lemu] ヨグヤ・ソロへ行けば、ブブルルムがお待ちかねだ。ジャワ語のルムは脂肪や油脂を意味 している。地元民はjenang lemuと呼ぶほうが多いらしい。ジュナンは濃い粘液状の粥や モチモチした固形菓子を指す言葉で、ドドルをジャワ人はしばしばジュナンと呼ぶ。 ブブルルムは水とココナツミルクを混ぜて炊かれた米粥が使われる。モチモチした菓子で あるジュナンはたいてい米の粉が使われるが、ジュナンルムを米の粉で作るひとはまずい ないだろう。 ヨグヤとソロは例によって対抗意識が強く、名前が同じでもヨグヤとソロでは中身が違う ことが多い。ソロでは粥にopor ayamやopor telurがかけられる一方、ヨグヤはココナツ ミルクとブンブの汁をかける。トッピングは鶏卵・豆腐・テンペなどで、ヨグヤ名物グド ゥッをおかずにするひともいる。 [Bubur Manggul] マドゥラの塩味粥がブブルマングルだ。ブブルマドゥラという名称の粥は甘粥なので、混 乱しないように気を付けなければならない。ブブルマングルの米粥は鶏のブイヨンで炊く ために脂飯の粥になる。ところが、おかずは鶏肉よりもエビを揚げたもの・卵焼き・豆腐 などの方が一般的になっている。 米粥には汁がかけられる。汁の作り方は、ククイ・トラシ・赤と白バワン・ナンキョウ・ コリアンダー・クミンを少量の油で炒め、サラム葉・スレー・塩コショウを加えてからコ コナツミルクと合わせて熱する。 粥を皿に入れてからココナツミルクで作った汁をかけ、その上にスルンデンを載せて供す る。この粥はトッピングのスルンデンが特徴的だ。 スルンデンは、ヤシの果肉をすり下ろしたもの、焼いたウコン、トウガラシ、赤と白バワ ン、粉末コリアンダー、サラム葉、スレー、塩・砂糖、植物油を均一に混ぜて弱火で熱し、 水気を半減させてからタマリンドの汁を加えてさらに熱し、水分を無くしてパラパラにし たものだ。 [Bubur Banjar] ブブルバンジャルと呼ばれているものの、これはご当地粥ではないのだ。スラカルタ市内 セレガン郡ジャイェガン町一帯に住むバンジャル系プラナカンたちが断食月のブカプアサ のために作っているブブルがそう呼ばれているのである。[ 続く ]