「ヌサンタラのお粥(16)」(2022年06月23日) ところが、もう一方のブブルチャンディルの団子は元々、モチ米で作られていたのだ。作 り方はこのようになっている。 モチ米粉と塩を混ぜ、温湯を少しずつ加えながら練る。成形可能な状態になったら、丸め て団子にする。次に鍋に水をたっぷり入れて沸かし、湯が沸いたら団子を入れて、浮き上 がって来るのをすくい取る。 別の鍋にヤシ砂糖・水・パンダン葉を熱し、団子を入れる。更にカンジ粉を加えて汁が濃 くなるようにする。出来上がったら皿に盛り、上からココナツミルクの汁をかける。この 汁もココナツミルク・塩・パンダン葉で作る。 ブブルチャンディルは汁にカンジ粉を加えて薄いブブル状にするから、確かにブブルとよ ぶことは可能だ。だからコラッとは違うものなのである。ところが、ブブルチャンディル のモチ米団子の代わりにブタウィのビジサラッを使うひとが出現した。そのときにブブル チャンディルビジサラッの名称が誕生したようにわたしには思われるのである。果たして モチ米団子は昔からビジサラッと呼ばれていたのだろうか?ともあれ、こうして物の名称 とは無関係に、いくつかのバリエーションが誕生したのではあるまいか。 モチ米団子とビジサラッを取り換えただけならまだしも、ひょっとしたら汁までコラッビ ジサラッのように作りながらそれをブブルと呼んでいるひとは本当にいないだろうか、と わたしは危惧するわけだ。 話では、食堂などでビジサラッを注文すると、タピオカ粉やモチ米粉で作られた団子が入 っていて、サツマイモの使われていないものに遭遇することが決して稀でないそうだ。そ の一方で、サツマイモ製ビジサラッがブブルスムスムに入って供されているケースもある。 こうなってくると、物の名称は由緒来歴が明らかであっても、現物を呼ぶときに混乱が起 こっているのであれば、だれもがその混乱に巻き込まれないでは済まないだろう。 ブブルスムスムとブブルチャンディルを混ぜて供することも頻繁に行われている。種々の 甘粥を同時に食べることの究極が甘いブブルのセットということにちがいあるまい。 [Bubur Bassang] ブブルバッサンはトウモロコシ粒とトウモロコシ粉で作られる。トウモロコシ粒はもちろ ん粘りのあるものを使う。作り方はまず、トウモロコシ粒を洗って一晩水に浸ける。それ を水で煮て軟らかくする。そこにココナツミルクとパンダン葉を入れて沸騰させる。脂肪 を分離させないように。トウモロコシ粉を水で溶いたものをその鍋に加えて汁を濃くする。 別に作っておいた濃いココナツミルクとバニラと塩を入れて煮込む。出来上がったら火を 消し、アツアツを供するときに白砂糖を加える。 ブブルバッサンは南スラウェシ郷土料理のブブルバロッボに対する甘粥版である。この甘 粥を朝食に食べるひとが多い。 [Bubur Sagu Rangi] 名前通りに乾燥サゴを使うのが一番良いのだろうが、レシピにはサゴ粉が書かれているも のもかなりある。作り方はまず、乾燥サゴを水に浸けておく。崩れたら水分を捨てる。次 に水とヤシ砂糖とパンダン葉を煮て、濃いめの砂糖溶液を作る。サツマイモまたはタロイ モをダイスに切ったものとパンダン葉を水で煮て軟らかくする。芋が軟らかくなったら崩 れたサゴをそこに加え、更にヤシ砂糖と白砂糖を入れてかき混ぜる。出来上がったら皿に 盛り、上からココナツミルクの汁をかける。この汁はココナツミルクと水と塩を加熱して 作る。 [Bubur Sagu Mutiara] サグムティアラはサゴ粉を球形の粒状にしたもので、それを甘く煮て食べる。まずムティ アラの粒を水に浸けて軟らかくしてから水で煮る。そこに白砂糖を加えて溶かしこんでか ら火を止め、ムティアラ粒は水から取り出す。砂糖と一緒にバニラを入れても良い。 [ 続く ]