「ヌサンタラのお粥(18)」(2022年06月27日)

[Bubur Jali-jali]
ジャリはenjelaiやjelai、もっと別の言い方ではhanjeliとも呼ばれる、水辺に生育する
大型のイネ科植物の一種であり、学名をCoix lacryma-jobiと言う。日本ではジュズダマ
(数珠玉)と呼ばれ、食用になるものをハトムギと呼んだ。日本でもハトムギ茶やハトム
ギ粥にして飲食の用に供している。

日本にもハトムギの粥はあるのだが、塩味の薬膳食として作られていて、日本人にとって
の粥という言葉の本質がそこに投影されているようにわたしには思える。日本人が粥と名
付ける食べ物は元来塩味のものを本義とし、文明開化以降に変化が起こったことは別にし
て、徹底的に甘い粥状の食べ物に粥という言葉を使わない原理を抱いてきたようにわたし
には思われるのである。そこにブブルと粥という言葉の間の、用法上の大きな違いが横た
わっているのではあるまいか?

このジャリは一般的に英語でJob's tearsと呼ばれているが、国際市場でChinese pearl 
barlyという名称で取引されている。一方、中国語では意以(それぞれ上に草冠を付ける)
と呼ばれていて、それらの漢字は大麦の意味を示さないように思われるのだが、どうだろ
うか?

日本でジュズダマと呼ばれたように、ジャリの実を糸に通して数珠のように作ることはブ
タウィの少年少女たちも行ったし、輪にせずに上から下に垂らしてすだれ状に並べ、屋内
を飾ることもした。少年たちは竹筒を切って実を中に入れ、後ろから棒で突いたり輪ゴム
を使ってその弾丸を敵に向けて撃つ鉄砲玩具を作って遊んだ。

ブタウィの俗謡の中にJali-Jaliと題する歌があるように、このブブルジャリジャリはブ
タウィ料理だとされている。ブブルジャリジャリのレシピにはこう書かれている。

まずジャリの粒をよく洗ってから、二時間水に浸ける。
次いで水を入れた鍋でパンダン葉と一緒に煮る。
少し軟らかくなってきたところで砂糖と塩を加えて十分に溶けるまでかき混ぜる。
ココナツミルク・パンダン葉・塩を別鍋で熱する。
器の中でそれらを合わせる。

ブブルジャリジャリが器の中でたっぷりのココナツミルクに浸っているものもあれば、ブ
ブルジャリジャリの中央に濃いココナツミルクが載せられているものもある。トウモロコ
シの粒がブブルに混ぜられたり、あるいはブブルカチャンヒジャウにジャリが混ぜられた
りもする。

最後に、Ini dia si jali-jaliと唄いながらこの項を終えようと思う。元々はガンバンク
ロモンの伴奏だったようで多分、ブタウィ華人楽団のレパートリーとして始まったのでは
あるまいか。しかしその後クロンチョン伴奏の方に移って行ったのだろう。どこかの時点
でガンバンクロモン楽団が衰退してクロンチョン楽団に取って代わられ、伴奏スタイルが
その流れによって変化したことが推測される。

Ini dia si jali-jali
Lagunya enak lagunya enak merdu sekali
Capek sedikit tidak perduli sayang
Asalkan tuan asalkan tuan senang di hati

Palinglah enak si mangga udang
Sayang disayang pohonnya tinggi buahnya jarang
Palinglah enak si orang bujang sayang
Ke mana pergi ke mana pergi tiada yang m'larang

Di sana gunung di sini gunung
Sayang disayang di tengah tengah kembang melati
Di sana bingung di sini bingung sayang
Samalah sama samalah sama menaruh hati

Jalilah jali dari Cikini sayang
Jalilah jali jalilah jali sampai di sini
[ 続く ]