「ヌサンタラのお粥(20)」(2022年06月29日) ガルッ芋は、まだ筋ができる前の状態であれば、蒸したり焼いたりしてそのまま食べるこ とができる。ガルッ粉は種々の食べ物・ブンブ・スープや汁・デザートやアイスクリーム などの粘り気を高めるために使われている。また粉を牛乳に溶いたものは、胃腸の調子を 正常化させたり、あるいは毒素への抵抗力を高めるために使われている。 イモをブブルにしたものは、傷や膿傷に効果があると言われている。ただし、作ってすぐ のものが使われなければならない。製紙工場ではそのブブルを、紙・ボール紙・ウオール ボードなどの生産に使っている。粉そのものも、白紛・糊・石ケンなどの製造原料の一部 になっている。ガルッ粉製造工程で出る廃棄物は家畜飼料や肥料に使われている。 ジュナンパティガルッは現代人の暮らしから忘れられかけている食べ物だ。まるで工業化 社会が個人の暮らしからガルッを奪い去ったようなありさまに見えないこともない。しか し、ガルッ粉は市販されているから、それを買って来てジュナンガルッを作ることはでき る。作り方はこのように説明されている。 まずガルッ粉と水を混ぜて完璧な水溶液を作る。 鍋に水とパンダン葉を入れて加熱し、沸いたらヤシ砂糖を溶かしこむ。 砂糖が溶けたら、更にガルッ粉の水溶液を、かき混ぜながら流し込む。 鍋の中は滑らかな粘液jenangになっていなければならない。 ココナツミルク汁を、ココナツミルク・水・パンダン葉・塩を混ぜたものを熱して作る。 鍋からジュナンをすくって皿に置き、その上からココナツミルクの汁をかけて供する。 [Bubur Kampiun] カンピウンはオランダ語kampioenがインドネシア語になったもので、どちらもカンピウン と発音され、英語のchampionを意味している。このブブルは西スマトラ州パダンが発祥で あり、パダン人がブブルのチャンピオンをこのようにして作ったことを示しているにちが いあるまい。 ブブルカンピウンの標準形はまず皿にモチ米白飯を置き、ブブルスムスム・ブブルクタン ヒタム・kolak pisangまたはkolak ubi・ブブルカチャンヒジャウ・ブブルチャンディル を次々に載せたものだ。 モチ米白飯の代わりにlupisを置くこともある。ルピスはモチ米白飯を三角のおにぎり形 あるいはロントンのような円筒形に成形してバナナ葉で包んだものだ。それにヤシ砂糖 溶液とヤシの果肉フレークをまぶしたものがkue lupisで、おやつとして食べられている。 もちろん、甘くせずにゴマ塩をまぶして食べてもかまわないのだ。 ブブルカンピウンの中には、ブブルチャンディルが抜けている場合もある。この場合はど ちらを標準と見れば良いのか、わたしには分からない。またブブルチャンディルの代わり にブブルドゥリマが載せられるケースもある。 ミナンカバウ語でbuburはbubuaと呼ばれる。パダン市内のパサルラヤパダンブロックAに あるワルンはブブアカンピウンが有名だ。この店ではなんと、モチ米白飯・ブブルスムス ム・ブブルカチャンヒジャウ・ブブルクタンヒタム・ブブルチャンディル・ブブルドゥリ マ・カボチャのコラッ・サツマイモのコラッの8種類が一皿に載って出て来るそうだ。 このブブアカンピウンと一緒に食べるとよく合うと言われているのがkue serabiで、この スラビもスラビパダンと呼ばれるちょっと大きめの、必ず米の粉で作られるものが最適で あるという評価になっている。 [Bubur Madura] ブブルマドゥラと呼ばれている食べ物も、ブブルカンピウンのように既述の甘粥数種類を ひとつの皿に載せて供しているものだ。たいていブブルスムスム・ブブルクタンヒタム・ ブブルビジサラッ・ブブルムティアラなどを載せて、上からココナツミルクの汁とヤシ砂 糖溶液をかける。[ 続く ]