「ヌサンタラのお粥(21)」(2022年06月30日)

ブブルカンピウンもそうだが、ブブルマドゥラも自宅でゼロから用意しようとすれば、た
くさんの甘粥とその実をそれぞれ少量だけ用意することになってたいへんだ。多種の甘粥
を作って置いておくうちに頭の黒いネズミやネコがやってきてちょっかいを出すかもしれ
ないから、なおさら手がかかることになりかねない。

マドゥラや東ジャワの町へ行けば、あちこちでブブルマドゥラが売られている。空腹にな
ったとき、ブブルマドゥラは高くない金額で十分腹にたまるものだから、それで一時しの
ぎをしておいて、家に帰ってからしっかり食事をするという便法にも使われている。ブブ
ルマドゥラの人気はそんなところにあるのかもしれない。

[Bubur Srontol]
一部のジャワ人社会で好まれているスロントルというおやつはタピオカを材料にしている。
grontolというよく似た名前のおやつもあるが、こちらは粒トウモロコシを蒸したもので
あり、スロントルとは関係がない。

ラマダン月のブカプアサにスロントルを食べるひとはたくさんいる。田舎へ行くと、スロ
ントルを手作りして、近隣住民に販売している家もかなりある。ヨグヤカルタ州クロンプ
ロゴのある生産販売者はラマダン月になると毎日20キロくらいスロントルを作って販売
しているそうだ。買いに来るのは近隣諸村の住民で、住民はほとんど毎日ブカプアサを茶
とスロントルで行うため、スロントルがないとブカプアサが空虚な感じになると語るひと
もいる。

スロントル生産者はまず、シンコンの根をよく洗ってすりおろし、十分しぼって水気を抜
く。それに塩とブンブを加え、小さく丸めて油で揚げる。出来立てのパリパリしたものを
食べるのが一番おいしいそうだ。

東ジャワ州モジョクルトに、ブブルスロントルという郷土料理がある。名前はブブルスロ
ントルなのだが、実体はブブルカンピウンなどと同じように甘粥の実を集めたものだ。ブ
ブルスロントルのレシピによれば、ヨグヤ一帯で作られている揚げタピオカのスロントル
とは違うものが使われている。作り方はこうなっている。

モチ米粉・サゴ粉・消石灰(水酸化カルシウム)水溶液・塩を容器に入れて混ぜ合わせ、
温湯を少しずつ加えて均等に練る。ドウは全部小さく丸めてスロントルにする。

鍋に水を入れ、ヤシ砂糖・塩・パンダン葉を加えて熱する。できた砂糖溶液は濾しておく。
そこにスロントルを入れて加熱し、スロントルが浮いて来るのを待つ。全部浮いたところ
でモチ米粉をその鍋に加え、ブブルがブツブツ破裂するまで煮込む。モジョクルトのブブ
ルスロントルというのはどうやらこれらしい。

しかしこのブブルスロントルだけが供されることはないようで、必ずブブルスムスムがそ
の傍らに侍る。更にジャワのおやつdawet hijauとサグムティアラの茹でたものが足しこ
まれ、例によってココナツミルク・塩・パンダン葉で作られた汁が上からかけられる。こ
うして、晴れてブブルスロントルのお目見えとなるのである。

ブブルのカテゴリーに入らないが、ブブルスロントルの構成員として使われるdawetにつ
いても触れておこう。

ダウェッもジャワのおやつで、緑色の細長いものがたくさん入っている甘い物だ。これが
飲み物になるのか、それとも食べ物に区分されるべきなのか、わたしにはよく分からない。
インドネシア人はしばしばminumanと呼んでいるから、飲み物と見られているようだ。緑
色の細長いものは太い麺をちぎったような姿をしている。ダウェッの発祥はジュパラだと
言うひともいるし、バンジャルヌガラという説もある。[ 続く ]