「ヌサンタラのお粥(終)」(2022年07月01日)

その緑色の細長いものは、米あるいはモチ米の粉にタピオカ粉またはカチャンヒジャウの
粉であるフンクエhunkue(粉◇)(◇=米+果)を少し混ぜて作られる。粉類を全部合わ
せてから水と塩で練ってブブル状のドウを作り、そのドウにスジ葉を絞った汁で緑色をつ
ける。パンダン葉ペーストを使ってもよい。

それを火にかけ、スプーンですくっても分離しなくなるまで熱する。できあがったら大き
い器に冷水を張り、穴が多数開いた皿状の道具にまだ熱いドウを入れ、冷水の上で上から
圧迫すると、熱いドウは適当な長さまで道具の下に押し出され、ちぎれて冷水に落ちる。
落ちなければ揺すって落とすまでだ。道具がなければ穴あき杓子で代用することもできる
が、効率はあまり良くない。

次いで、鍋にヤシ砂糖・白砂糖・水・パンダン葉を混ぜて熱し、砂糖溶液を作る。これは
沸騰させる必要がなく、中火で加熱し、砂糖が完全に溶けてそこそこドロリとしてくれば
完成だ。最後に上からかけるココナツミルク汁を、ココナツミルク・塩・パンダン葉で作
る。こちらは一度沸騰させればできあがり。この汁は大量に使われるから、濃くなくてよ
いかもしれない。お好み次第というところだろう。

透明なコップの底にまずヤシ砂糖溶液を入れ、その上に緑色のダウェッをたっぷり置き、
最後にココナツミルク汁を注ぎ込む。ココナツミルク汁はダウェッの隙間を埋めるから、
コップの底は茶色、その上が緑と白の混合、一番上は白という見映えの良いおやつができ
あがる。たいてい一番上には氷が載せられて、これがes dawetというデザートになるので
ある。時に黒モチ米を発酵させたtape ketan hitamが混ぜられることもある。


まったくそっくりなものに、西ジャワが発祥と言われているes cendolがある。ただしま
ったくよく似たチェンドルはもともとsagu arenやフンクエが使われていた。サグアレン
はアレンヤシの幹から採ったでんぷん質で、袋詰めされた粉末が市販されている。

フンクエのチェンドルは粘り気があって噛み応えがコメ製のダウェッと違っていたが、チ
ェンドルもダウェッのように米の粉で作られるようになり、名前は違えど中身は同じとい
う相互乗り入れ状態になってしまった。しかし、エスダウェッにタぺクタンヒタムが加え
られるように、エスチェンドルにはナンカの実の細切れが混ぜられることが多い。

ともあれ、チェンドルの作り方も上で述べたダウェッと同じようにして作ればよいのであ
る。しかしまったく同一のものを異なる名前で供するのも芸がなさそうだから、コップに
作る層の順番を変えてみたりスレーの茎を挿したりして、印象を変えてやるのがいいのか
もしれない。

歴史の中でチェンドルとダウェッは、1866年に出版されたOost-Indisch kookboekに
Tjendol of Dawetと書かれたのが史上最古だそうで、オランダ人もそのふたつを同一のも
のと見なしたようだ。1869年のMaleisch-Nederduitsch Woordenboekには、チェンド
ルはサゴ・ココナツミルク・砂糖・塩で作られる飲み物の一種、あるいは薄いパスタであ
ると書かれている。[ 完 ]